漢方や薬膳と言った中国の医学は、取り入れるには少しハードルが高い印象がある。AERA 2020年1月13日号は、専門家に監修を依頼、漢方・薬膳を簡単に取り入れられる「二十四節気薬膳カレンダー」を掲載した。
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食材の五性を一度に覚えることは難しい。冷え症に悩む人が、「冬の食材は体を温めるはず」と思い込み、せっせと根菜を食べていたら、実は根菜の多くは体を冷やすものだった──という残念なケースも少なくない。
というわけで、薬膳生活のめやすを専門家に尋ねることにした。中医薬膳師で漢方&薬膳アドバイザーの杏仁美友さんに協力を得て作ったのが、「二十四節気薬膳カレンダー」(最下段)だ。
二十四節気とは、農作業を行う際、種まきや収穫の時期を把握するために、古代中国で生まれた暦のこと。1年を約15日ごとに24等分し、暑さ、寒さなどの気象の変化、動植物の様子、農事の節目を表した名前が付けられている。立春、春分、夏至、大寒のように、現代を生きる私たちにとっても馴染み深いものが多くある。
杏仁さんによると、薬膳には基本が二つある。一つは、その人に合った食材を取ること。もう一つは、季節や自然に合わせたものを取ること。
「冬は温熱性の体を温める食材だけを取ればいいかというと、実はそうではありません。冷え対策と同時に乾燥対策も考えなくてはならず、潤いをもたらす食材も必要です。旬の食材には、自然とそんな作用を持つものがそろっています」(杏仁さん)
薬膳が目指すところは「中庸」にあると、杏仁さんは言う。温めすぎず、冷やしすぎず。水分の代謝をよくする一方で、血や体液を補って腸内を潤す。
「薬効は生薬だけが持っているものではなく、すべての食材に備わっています。組み合わせや調理法のひと工夫で効果を倍増することもできます。ぜひ、このカレンダーを参考にしてみてください」(同)
正月休み明け、少したるんだ体の代謝を上げつつ、体調もきちんと整えたい。今年こそ健康的な生活を始めたいと考えているなら、意外と身近な漢方の扉を叩いてみてはどうだろう。(ライター・羽根田真智)
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監修/杏仁美友(国際中医師、中医薬膳師、漢方&薬膳アドバイザー)
(かっこ内は寒性・涼性・平性・温性・熱性の分類)
立春(2月4日頃)
黒豆(平)……腎の働きを高め、血を補って巡りをよくし生理不順にきく。滋養作用や水分代謝アップにもいい。
雨水(2月19日頃)
春菊(涼)……気の巡りを改善。肝の働きを助け、目の充血や高血圧にいい。痰の多い咳を鎮め、整腸作用も。
啓蟄(3月5日頃)
いちご(涼)……体の熱を冷まして喉の渇きを癒やす。胃腸の働きを高める。抵抗力を高め抗酸化作用もある。
春分(3月21日頃)
菜の花(温)……肝の機能を高め解毒作用がある。体を温め気血の流れもよくする作用がある。