羽生は冒頭の4回転サルコー、続くトリプルアクセルは決めた。しかし、3本目の4回転-3回転の連続ジャンプが、単発ジャンプになってしまった。チェンとショートでついた点差は約13点。コーチがトラブルでショートには間に合わず、独りぼっちで座ったキス・アンド・クライでは表情がさえなかった。
「悔しいはすごいあるんですけど、悔しいって言っててもしょうがないので。とにかく、これから1分1秒をどうやって過ごすかというのを、いろいろ計算しながら、計画立てながら、しっかりやっていかないといけないなって思います」
フリーは25歳の誕生日だった。記念すべき日に、羽生は4回転ジャンプを5本組み込む構成で挑んだ。冒頭の4回転ループを鮮やかに決め、続く4回転ルッツを2年ぶりに試合で成功させた。客席の興奮が最高潮に達し、4回転サルコー、4回転トーループからの3連続ジャンプ、4回転-2回転の連続トーループジャンプを着氷した。最後の最後、3回転半-3回転半の連続ジャンプは前のジャンプが空中で回転がほどけてしまい、シングルアクセルになった。フィニッシュポーズを決めようとしても、ひざから崩れ落ちてしまうほど、羽生は出し切った。
「成長できた試合でしたし、ショートのミスがあってこその今回のフリーの挑戦だったと思います。いろいろと考えさせられることと、いろいろ必要なものが見えているので。自分の中での勝負にはある程度勝てたので、試合として一歩強くなれたんじゃないかなって思います」
羽生の合計点は291.43点だった。直後に滑ったチェンも4回転ジャンプ5本を決めて、合計335.30点。歴代世界最高得点を更新する演技を見せ、最終的には羽生と40点以上の差がついた。
「今回は点差がすごいですけど、もちろん自分もそういう点差をつけて勝ったこともありますけど。でも、今回の点差はそんなに自分が思っているほど遠くないと思っています」
悔しい試合になった。負けず嫌いの羽生がこの大差に悔しくないはずがない。4回転ループ、サルコーを鮮やかに決め、けがの恐怖もあった4回転ルッツも成功。それでも、差は広がった。この差を埋める最後のカード、それはクワッドアクセル(4回転半)ジャンプだ。