韓国の少子高齢化は日本以上に急速に進む。昨年の出生率は0.78%と過去最低を更新し、高齢化率は2065年には日本を上回るとの推計もある。実は韓国は20年も前から、農村部や地方都市では結婚移民女性(外国人妻)を、製造業や農漁業では外国人労働者を受け入れてきた。国主導で語学や文化教育など支援策を展開する一方、難民の受け入れ時などには排外主義も噴出。韓国の事例は、日本の政策の参考となるのか。『移民大国化する韓国 労働・家族・ジェンダーの視点から』(明石書店)から一部抜粋・再編集し、実態に迫った。(聖学院大学教授・春木育美、朝日新聞記者・吉田美智子)
■「韓国人増加プロジェクト」
ある小学校の教室で勉強する3人の子どもたちとその母親たちの顔が、順番に映し出される。それに続いて、小学生の女の子の声が流れる。女の子は韓国人である。
「私の友達のビョンミンは、インドネシア語がすごく上手です。インドネシアから来たお母さんのおかげです。ビョンミンの夢は、インドネシアと韓国に貢献する通訳官です」
「私のクラスで一番勉強ができるエジンも、お母さんがフィリピンから来ました。医者になって世界中の人を治療したいそうです。エジンが夢を抱けるのも、フィリピン人のお母さんのおかげです」
「私の学校の生徒会長のジウォンさんは、国連総長になって、世界中の子どもを助けたいと言います。世界で活躍することを夢見るジウンさんも、お母さんがベトナムから来ました」
続けてナレーションが流れる。
「韓国の子どもたちに、世界は広いということを気づかせてあげてください。多文化家族(国際結婚家庭)は、子どもたちが世界と出会う、最初の窓口です」
韓国政府機関が流すCMの映像からは、国際結婚家庭の子どもたちの優秀さや、子どもを立派に育てている結婚移民の母親を称えようとする意気込みが感じとれる。一方で、気になるのは、子どもたちの夢の「大きさ」である。ランク付けされた職業観や一握りの勝者しか生まない熾烈な競争社会が、韓国では超少子化の大きな一因となっている。現実に目を向けると、国際結婚家庭の大学進学率は40.5%と、全国の進学率(71.5%)と比べて著しく低い。