韓国のサムジンスチールで働く外国人労働者(吉田美智子撮影 朝日新聞社)
韓国のサムジンスチールで働く外国人労働者(吉田美智子撮影 朝日新聞社)

 しかし、制度の創設から20年。母国から家族を帯同できず、転職には雇用主の同意が必要など何かと制約のある制度には批判も強い。

韓国政府は2018年から、雇用許可制の利用者の中から、一定の所得や学歴があり韓国語能力や技能を獲得した者には在留資格の変更を認め、家族の帯同や定住化を認めるという制度を導入した。法務省は「能力のある外国人労働者は、非熟練労働から専門人材に移行し、次の段階に進むことができる」と説明する。選別的な移民の受け入れが始まっている。

■留学生に期待される労働力

 韓国への留学生数は、2000年の3963人から2020年には137万人に急増した。留学生の出身国は、中国、ベトナム、モンゴル、日本、米国が上位5カ国となっている。

 韓国では日本と同様に、留学生の就労(アルバイト)を許可しており、単純労働の担い手として労働力不足を補っている。ただ、国内の若者の就職難が深刻なことから、留学生を高度人材として受け入れ、移民として活用するという視点は乏しい。

 韓国政府は現在、留学生を非熟練労働の補填要員として活用すべく、留学生ビザから、建設業や製造業、農畜産業などに従事できる「非専門就業ビザ」への変更を認める制度への改正を進める。いわゆる3K(きつい、汚い、危険)のイメージをもたれやすい業界の労働力不足を、留学生で穴埋めをしていこうとするものである。

■排外主義の高まり

 韓国は2000年代からすでに外国人支援策の枠組みを構築し、各種の制度を整えてきた。居住外国人を対象として、最大515時間の韓国語教育などを行う「社会統合プログラム」実施機関が全国に設置されている。こうした制度的枠組みは、韓国政府が打ってきた布石のなかでも、今後、最大級の強みとして作用するだろう。尹錫悦政権は現在、移民政策をコントロールするために「移民庁」新設に乗り出している。

 懸念されるのは、近年の排外主義の高まりである。2010年代に入り、結婚移民者やその子どもの支援策、難民支援に対する反発が目立つようになった。支援を受けるべきなのは「自分たちが先だ」という声が上がり、韓国政府は既存施策の大きな修正を迫られている。どんなに制度や仕組みを整え、予算を増やしても、人々のマインドセットが伴わなければ、共生社会への道のりは険しいことが韓国の事例からわかる。

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