韓国では2000年代以降、国際結婚が急増した。農村部や都市低所得層の結婚難、国際結婚仲介業のグローバル化などがその背景にある。2019年の統計では、国際結婚は全結婚総数の9.9%を占める。ピーク時の2005年は全結婚者数の13.5%だった。国際結婚家庭の子どもは年々増えており、すっかり身近な存在になった。
韓国政府は「新しい韓国家族」を全面的に支援する目的で、「多文化家族支援センター」を全国228カ所に設置し、体系的かつ手厚い無償の韓国語教育や相談業務、生活支援を行ってきた。国際結婚は夫と妻の年の差が大きいこともあり、近年は結婚移民女性の社会参加と経済的自立を図るための就業・創業支援事業にも力を入れている。
韓国政府が2000年代から多額の予算を投入して大々的な支援体制を整備したのは、結婚移民女性が、韓国男性の結婚難を解消し、次世代の再生産を担う国益に合致した存在であるとみなされたためである。結婚移民女性には韓国人の子どもを産み育てることが期待されたがゆえに、国際結婚家庭に対する育児支援策もまた手厚いものとなった。産後のケアヘルパーや子どものための韓国語教師・言語療法士の派遣からバイリンガル教育の提供、奨学金の付与や大学入試での特別枠など、子どもの成長過程に合わせた配慮がなされている。
こうした国際結婚家庭への広範囲の支援策は、「韓国人増加プロジェクト」として始まったものである。少子高齢化による人口減を補填し、労働力を維持し社会発展に役立つと考えられてきたため、年を追うごとに予算が増大した。
■手厚い支援と人材活用
自治体や行政機関の住民への通知も、多言語対応が進む。自治体窓口にたずねてきた外国人住民との意思疎通に支障がある場合は、コールセンターに無料で電話通訳を依頼することもできる。学齢期の子どもがいる結婚移民者や外国人家庭には、韓国語で書かれた学校からの各種のお知らせを各国語に翻訳して保護者の携帯などに転送するサービスを行う自治体もある。