若者からお年寄りまで、現地で配られた日の丸の小旗を多くの人が手にしていたことに、戦時中の記憶が呼び起こされたのだろうか。だが、その叫び声は一瞬で人混みの中に埋もれた。
桜田門の検査所では、パレード開始の直前に、手荷物検査の順番が回ってこなかった人たちを一気に観覧ブース寄りに誘導したため、大勢の人たちが突然走りだす混乱もあった。
「危険だから走らないで下さい」
警察官がこう繰り返し叫んだ十数分後には両陛下のオープンカーが通り、「雅子さまー!」と歓声が上がっていた。
祝賀御列(おんれつ)の儀は、昭和から平成への代替わりから始まった儀式だ。今回は「即位礼正殿の儀」とともに10月22日に実施される予定だったが、台風19号の被災者に配慮して延期された。
約400メートルの車列は、車と白バイ、サイドカーを合わせて計46台。その後、国立国会図書館前、青山一丁目交差点などを通ってお住まいの赤坂御所までの約4.6キロメートルのコースを、約30分かけて時速10キロほどでゆっくりと進んだ。前回は国会正門前から三宅坂を通って青山通りに入っていたが、今回は自民党本部前などを通るルート変更があった。
西日にティアラが輝き、笑みを絶やさなかった雅子さま。涙ぐみ、時折ハンカチで目頭を押さえる場面も見られた。
今回のパレードを専門家はどうみるか。ヨーロッパの王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんは、自宅のテレビでその様子を見守っていた。
「天皇陛下の穏やかな笑顔も良かったし、雅子さまにとってもパレードの延期は日程を詰め込まずに済んだので良かったのではないでしょうか」
ただ、英王室と比較すると、「異様だ」と感じたことが2点あった。
「一つはテレビの報道。NHKから民放まで、そろってまったく同じような内容で中継していました。『当たり障りなく報道しないといけない』という雰囲気をテレビ局に感じさせるような何かが、まだこの国に蔓延しているのだと思います」