国民からの祝福を受けて、穏やかな表情でほほえむ天皇、皇后両陛下。このパレードで即位に伴う国の儀式はすべて終わった/11月10日、皇居・南車寄せで(写真:日本雑誌協会)
国民からの祝福を受けて、穏やかな表情でほほえむ天皇、皇后両陛下。このパレードで即位に伴う国の儀式はすべて終わった/11月10日、皇居・南車寄せで(写真:日本雑誌協会)
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 沿道に響く歓声に、オープンカーから笑顔で応える天皇、皇后両陛下。皇居・宮殿から赤坂御所まで続いた即位パレードの沿道の様子を記者が取材した。AERA 2019年11月25日号に掲載された記事を紹介する。

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 パレード直前。陸上自衛隊の「儀仗隊(ぎじょうたい)」が整列すると、皇居前広場は緊張感に包まれた。

 皇居・宮殿前には、「大勲位菊花章頸飾(けいしょく)」という最高位の勲章をつけた燕尾(えんび)服姿の天皇陛下(59)と、白のロングドレスをまとい、上皇后さま(85)から受け継いだティアラを身につけた皇后雅子さま(55)が姿を見せた。11月10日午後3時、そろって乗り込んだのは、トヨタのセンチュリーを改造したオープンカーだ。宮内庁楽部による奉祝行進曲「令和」の演奏で見送られ、出発した。

 両陛下が乗ったオープンカーが二重橋を渡ると、集まった人々から歓声が上がった。ガラス越しではない姿を焼き付けようと、多くのスマートフォンや一眼レフカメラがお二人に向けられた。時間にしてわずか10秒ほど。車両が通り過ぎた後、注目を集めたのは、両陛下の姿をうまく写真に収めた人たちだった。

「雅子さまの笑顔が素敵! アドレスを教えてください」
「AirDrop(エアドロップ)できますか」

 ベストショットを求める人たちのやり取りは、警備の誘導が始まるまで続いた。

 陛下と雅子さまの成婚パレードから2人の写真を撮り続けているという男性(52)は、200ミリのレンズで雅子さまの笑顔をとらえることができた。

「メディアを通してではなく、自分の目で見ると全然違います。5月の一般参賀も今日も、雅子さまがとてもきれいで自信にあふれているようでした」

 一方、国会前や桜田門の観覧者用ブースを目指した人たちでごった返していた霞が関の官庁街では、高齢の男性がこんな叫び声を上げていた。

「戦時中じゃあるまいし、日の丸なんか振るもんじゃない!」

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