WBC1次ラウンドで4連勝を飾り、準々決勝に進出した侍ジャパン。打線の核として期待された鈴木誠也(カブス)が左脇腹痛で大会前に出場辞退したことは大きな痛手だったが、代わりに右翼に入った近藤健介(ソフトバンク)が2番で打線の潤滑油になり、見事にカバーしている。
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4試合出場で打率.467をマーク。広角に安打を打ち分けるだけでなく、韓国戦では右中間にアーチを放つなど1発もある。2ストライクと追い込まれても簡単にアウトにならず、ファールでカットして投手を消耗させる。選球眼が良いため、ボール球をきっちり見極められる。出塁率.600は驚異の数字だ。1番・ヌートバー(カージナルス)、3番・大谷翔平(エンゼルス)の活躍が目立つが、近藤は「影のMVP」と言ってよいだろう。
近藤は気配りの人としても知られている。スポーツ紙記者はこう語る。
「侍ジャパンにサポートメンバーが合流した時に、チームの輪に溶け込みやすいように積極的にコミュニケーションを取っていたのが近藤でした、日本ハムでチームメートだった大谷も慕っています。外国人投手は手元で動く独特の軌道なので苦戦する打者は多いですが、近藤はミート能力が高くきっちりヒットゾーンにはじき返せる。国際試合向きの選手ですね。準々決勝以降もキープレーヤーになると思います」
一方で、心配なのが4番を打つ村上宗隆(ヤクルト)だ。昨年は日本記録のシーズン56本塁打を樹立。史上最年少の22歳で三冠王を獲得したが、大会前の壮行試合、強化試合から状態が上がらず、1次ラウンドでも4試合出場で14打数2安打、打率.143、0本塁打、2打点。3戦目のチェコ戦、4戦目の豪州戦と2試合連続安打が出たが、長打は1本も出ていない。気になるのは7三振のうち、見逃し三振が4つと選球眼に狂いが生じていることだ。
「大谷が目の前であれだけ打つので、意識するなという方が無理でしょう。結果を出さなければという気負いが感じられる。甘い球を見逃し、難しい球を打ちにいく状態を見ると本調子には程遠い。村上が打つと盛り上がるのは間違いないが、今後の戦いはトーナメント制の1発勝負で負けが許されない。準々決勝・イタリア戦でもスタメン起用の可能性は高いですが、もし結果が出ないようだったら決勝ラウンドで心中するのは危険です。ヤクルトでは唯一無二の存在ですが、侍ジャパンには能力の高い選手がそろっている。牧秀悟(DeNA)は本職が二塁だが一塁を守れるし、山川穂高(西武)も控えている。三塁に岡本和真、一塁に山川という布陣でも十分に戦える」