大学を選ぶ基準は偏差値、教育内容、研究成果だけではない。大学淘汰の時代を生き残る「経営力」も重要だ。専修大学商学部の小藤康夫教授が、各大学が公表した「事業活動収支計算書」と「貸借対照表」から算出。国内有名33私大の「資産運用力」「基本金組入率」「自己資本比率」を比較した。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。
* * *
まずは資産運用力だ。資産運用力が高い大学ほど教員などの教育環境が充実している傾向があり、成長性も高い。米国の大学では資産運用の収益が収入の柱となっており、例えばエール大学は収入の40.1%、ハーバード大学は38.8%(ともに18年度)を運用益が占める。
日本の大学は従来、元本割れを恐れリスクを取った資産運用に慎重だったが、超低金利が続く時代にあって、積極的な運用に回す動きは徐々に出始めている。受験料や授業料の収入に手詰まり感があるためだろう。
資産運用力の上位をみると、3.13%の東京理科、1.79%の早稲田、1.71%の立命館と続いている。
東京理科の吉本成香常務理事(69)は、「リスクを抑えながら多方面への分散投資を行っている」状況の中で、18年度は不動産系のファンドを売却したことによって利益が入ったことが原因だと説明している。
早稲田は17年12月に元本1億ドル(約108億円)で「ワセダ・エンダウメント」を創設した。エンダウメントは米国でいう大学基金。前出のハーバードは約4兆円の基金を8%のリターンで回し、年間の収入は約3200億円。豊富な資金を教育研究に投資しており、早稲田も同様の方向を目指す。収益は奨学金や研究に充て、一部は再び基金に組み入れて規模を拡大する。早稲田の宮島英昭常任理事はこう言う。
「時間分散などあらゆるリスクを分散し、5年かけて100億円投資する予定です。欧米の大学だと平均的に7%リターンが期待され3%くらいを再投資にあてていますが、早稲田もほぼそれを目標としています」