「診療報酬の実質マイナス改定により収入増が見込めないなか、高額医薬品や償還のない医療材料の使用増加など、コストの増加が収支を圧迫する一因となっている」(財務部)

 東海は16年に起きた地震で阿蘇キャンパス(熊本県南阿蘇村)が被災しており、18年度も関連の損失を5億円計上するなど、影響が続いている。

 同じ医学部関連の影響がみられたのは近畿。売上高は4位だったが、純利益では9位とやや落ちた。18年度に大阪府堺市内の病院を経営譲渡したことによって除却損を39億円計上したことが影響したという。

 キャンパスの拡大や学部の新設など拡大路線を歩んできた近畿。關戸智好理事(60)は「医療については収入を上げる努力をしているので、今後増えていく要因になる」。ここ数年では学費の7%値上げや、既存学部の定員増もあったほか、今後も新学部の計画があるという。

 小藤教授は「規模が大きい大学ほど学生1人あたりの教員や職員が充実していたり、蔵書が多かったりする傾向がある。規模の拡大は大学経営安定化の大きな要素だ」と分析する。医学部と付属病院は規模を押し上げる効果が大きい一方、利益を食いつぶす「金食い虫」の側面も持つ両刃の剣と言える。

 どのぐらい効率よく収益を上げているかを示す「ROE」は、企業で言えば10%程度が優良企業の目安だ。大学は営利の追求が目的ではなく、高いほど良いとは言えないが、小藤教授は「ROEが高い大学は経営に対するトップやスタッフの意識が高く、無理な投資で大失敗するリスクが小さいと言える」と分析する。上位をみてみよう。

 1位は日本女子で5.01%。21年に創立120周年を迎えるにあたり、記念事業に向けて18年度にPTA組織から受け取った寄付金が影響した。規模が小さいこともあり、臨時収入の影響が大きく表れた。

 2位は東洋で3.82%。長谷川浩則経理部長は「資産運用の体制の見直しを行い、これまで持っていた有価証券や金銭信託を一回きれいに売却した。それで大きな利益が出ています」と説明する。東洋は今年度、資産運用を専門の会社への委託契約の形に変更し、収入源の確保に本格的に乗り出した。

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