「テレビの女性アナウンサーを見ると、その国で理想とされている女性像がわかる」と言われます。すごく大雑把な言い方をしますが、日本の女性アナウンサーは「かわいい系」のかたが多い気がします。甘く優しい顔立ちで、ひざ下スカートにふんわりトップスといういでたち。対してアメリカの女性アナウンサーは「キレイ系」です。マスカラとアイライナーで目じりをキリッと吊り上げ、ボディラインを強調した服に身を包んだ、迫力ある女性が多い印象です。
国によって形を変える「理想の女性像」。女性アナウンサーだけでなく、広告やAIなど、社会のいろいろな場所に投影されています。そして、子ども向けの伝記もそのひとつじゃないかと思うんです。
アメリカの子ども向け伝記を見ると、「強い意志で社会を変えた女性運動家」や「女性としては先駆的な活躍を遂げた女性」が好まれているように見えます。書店・図書館には必ずあるといっていい伝記定番シリーズ5種類(※注1)のラインナップを調べたところ、次のような女性偉人たちがよく取り上げられていることがわかりました。
ローザ・パークス(公民権運動の母)
ハリエット・タブマン(奴隷解放運動家)
マザー・テレサ(修道女)
マリー・キュリー(キュリー夫人。科学者で物理学者)
ジェーン・グドール(チンパンジー研究者)
アメリア・イアハート・イヤハート(パイロット)
初めの3人は人種差別や貧困問題に正面からぶつかった運動家、あとの3人はほとんど女性がいない分野で大きな功績を残した人物たちで、「強い」「勇敢な」「革新的」「先駆者」といった言葉が連想されます。
さて、日本の子ども向け伝記はどうなっているでしょう。主要出版社5社(※2)の伝記シリーズを比較したところ、どの出版社も必ずラインナップに入れている世界の女性偉人が3人いることがわかりました。皆さん、誰かわかりますか?
その3人とは、
・アンネ・フランク
・ナイチンゲール
・ヘレン・ケラー
です。