
フィギュアスケート男子シングル復帰2季目の高橋大輔選手がアイスダンスへの転向を公表した。パートナーの村元哉中(かな)は同じ関西大学の出身。大学内のリンクで練習を共にしたこともあるという。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。
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「競技者としてやるにあたり、2022年を掲げることはすごく大事なこと。簡単なことではないのは承知のうえで、大きな目標の一つとして掲げて目指していくということは、アイスダンスをやるとなった時に、2人で一緒に決めました」
フィギュアスケート男子で2010年バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔(33)が、アイスダンスへの転向を表明した。9月30日の会見で、高橋の口からは明確に北京五輪挑戦の言葉が出た。まさに青天の霹靂とでもいうべき決意表明だ。五輪メダリストが33歳でアイスダンスに転向というのは前代未聞で、果たして北京五輪が現実的なのかも、推し量れない。
転向の話が浮上したのは今年1月。アイスダンスのパートナーとなった村元哉中(かな)(26)からの誘いだった。村元は18年平昌五輪15位、世界選手権11位と日本歴代最高順位を記録したものの、パートナーとペアを解消し、相手を探していた。高橋は言う。
「もともとアイスダンスは好きなので、引退したら趣味でやってみたいとは思っていました。哉中ちゃんからオファーがあって面白いな、でも僕でいいの?という感じでした。僕は身長も低くて、アイスダンス経験もないし、33歳。もっと若かったら前向きに行けるけど大丈夫かなと思いました」
高橋は、昔からアイスダンスが好きで、男子の試合の合間にはよく演技を観戦していた。11年夏にはフランスのアイスダンスチームのもとでエッジワークのレッスンを受け、
「膝の使い方がまったく変わった。演技に幅がでた」
と、アイスダンスの魅力を実感したこともある。
まずはトライアウトをすることになり今年7月、アイスショーの練習の合間に2人で滑った。
「すべてがシングルとは違いました。近くに人がいて滑るというのは、二十何年滑ってきてもなかった経験。距離感が怖いと思いました。でも、お互いの力が合わさった時のスピード感や、身体の傾きは、1人では感じられない世界観がありました」
村元と組んだ第一印象を、高橋は村元に「楽しかった」と伝えた。そこで心が決まった。