高橋:まなほさんが寂聴さんにかけられた忘れられない言葉三つを教えていただきたいのですが、一つ目はなんですか?
瀬尾:「『私なんか』なんて決して言わないで」です。
高橋:誰もが口に出さないまでも、思ったことがある気持ちなんじゃないかなと思います。どんな時に寂聴さんから言われたんでしょうか?
瀬尾:この言葉には続きがありまして、「『私なんか』なんて言わないで。この世にたった一人しかいない自分を粗末に扱う人間は寂庵にはいらない」と。
高橋:この時のまなほさんは「私なんか」という言葉を使ってしまいがちだったんですか?
瀬尾:先ほども申しましたが、就職活動がうまくいかず、自己肯定感が低くなっていました。でも、寂庵では瀬戸内が本当に小さなことでも褒めてくれるんです。ある日、「まなほ、これやってごらんよ」と言っていただいたんです。でも、「私なんかそんなことできません」と言ったら、初めて瀬戸内の目つきが変わって怒られたんですよ。
高橋:初めて怒られたんですね。
瀬尾:そうなんです。すごくびっくりしたんですけど、自分を粗末にしていることを他人が私のために怒ってくれた。それがすごくうれしかったんです。
高橋:愛ですね。自分を肯定してくださる味方みたいな方がそばにいらっしゃるというのは。
瀬尾:もう怖いものがない! ではないですけど、今、私は瀬戸内のことを本当に最強の味方だと思っています。
高橋:いい話です! 忘れられない言葉二つ目は?
瀬尾:「大丈夫。まなほは絶対幸せになります」です。
高橋:こちらはどんな時に言われたんですか。
瀬尾:23歳から瀬戸内のもとで働き始めて、気づけば30歳を過ぎていました。友人たちはだんだん結婚していったり、子どもが生まれたり。私は何もなさすぎて、自分の中で「将来結婚できるのかな?」とか「私に合う人いるんだろうか」と不安になってきたんです。
高橋:焦りみたいなもの……。
瀬尾:そうですそうです。そんな時に、「先生、私大丈夫かな?」と聞いたら、「大丈夫。まなほは絶対幸せになるから」と言い切ってくれたんですよ。
高橋:それはまた力になりますね。でも、寂聴さんはまなほさんが1日休んだだけで「久しぶり」って言うことがあったり、「まなほがいないと笑うこともない」って言われたりされるんですよね? 「結婚します」って言った時は反対みたいなことはなかったんですか。