「一生一市民として活動を続けると思っていました。でもこうして役割が回ってきた以上、国会の中に入って法制度を変えていく議論をしていきたい」(木村)(撮影/品田裕美)
「一生一市民として活動を続けると思っていました。でもこうして役割が回ってきた以上、国会の中に入って法制度を変えていく議論をしていきたい」(木村)(撮影/品田裕美)
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 参議院選挙後初の臨時国会が召集された8月1日、2人の新人議員が注目を集めた。大型車いすで登院した日本初の重度身体障害者の国会議員の存在は、どんな変化を社会に巻き起こすのか。フリーライターの玉居子泰子氏がリポートする。

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 令和初の参議院選挙11日後に召集された臨時国会。午前10時から始まった本会議には、れいわ新選組から特定枠で当選した脳性まひの障害を持つ木村英子(きむらえいこ)(54)と、体中の筋肉が動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の舩後靖彦(ふなごやすひこ)(61)の姿があった。1時間半近くの議会中、大型の電動車いすで本会議場左前方入り口近くに席を取った2人を、報道陣が2階から身を乗り出し、写真に収めていた。

 実は、この日、ギリギリまで2人の初登院は危ぶまれていた。国会議事堂の中央玄関にはスロープがつけられ、議場後方に大型車いす2台のスペースを確保、充電用の電源も新設され、ハード面は突貫工事で整えられた。だが、介助者をつけるための重度訪問介護制度は、主に自宅での利用を想定しており、就労・就学時の利用が認められないという問題が浮上していた。

 木村と同じ脳性まひで、これまで共に障害者自立支援に関わってきた東京都多摩市の藤吉さおり(45)が早朝から車いすで国会前に駆けつけていた。

「今日はまず、2人が国会に入れるのかを見届けにきました。障害者がおかれている実情を当事者の言葉で伝えてほしい。でもその声が他の議員の方たちに届くのか、不安もあります」

 重度訪問介護サービスについて、舩後と木村は制度の抜本的な改正を要望し続けていたが、暫定的に参議院が費用負担をすることで合意。2人はひとまず登院を決めた。介助者も一緒だ。

 参議院正副議長の選出には介助者が代理投票し、常任委員長の人事などについては、介助者が資料を両議員の視線の届くところに掲げ、本人に代わって「異議なし」などの意思表示をした。

 傍聴席から、木村の介助者が何度か車いすの位置や背もたれを調整する姿が見られたが、舩後は呼吸器の痰の吸引などの大掛かりな介助はなかった。午前中の議会はスムーズに進行。議会終了後、他の議員が全員退出した後、2人は静かに議場を後にした。

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