メモの先にある最終的な人生の目的や課題を見つけないと、そもそもメモを書く熱量が湧かない、と強調する。

「ビジネスマンに限ったことじゃない。課題がなくて生きている人って、僕は皆無だと思う。まずは自分の課題に気づくことが最初のステップ。その課題を分析し、解決策を打って乗り越えていく。その時に必要な高い思考能力をつけるのに、メモほど優れたツールはありません」

 メモは原則、手書きにこだわる。アイデアの創造に向いていることに加え、運のいい人はアナログ派だと感じるからだ。

「あるアメリカの心理学者が科学的に分析した運のいい人の習慣の一つに、『上機嫌であること』があります。機嫌がよくポジティブなオーラを発している人には、自然といい人が集まる。その人の身振り手振り、表情に、良質な情報や共感が引きつけられていくんです。アナログでメモを取ることと、この習慣は繋がっています。『目の前で自分の話を一生懸命メモしている』様子を目の当たりにして、嫌な気持ちになる人はそうそういない。多くの人はその姿に惹かれるでしょう。結果、自分に集まってくる情報の量と質が上がり、運の強さが変わります」

 ちなみに読書は電子書籍。読書量が膨大で、紙の本だと購入・整理が非効率だからという。

「本はたくさん読みます。平均すると1日1冊くらいは読んでいるんじゃないかなと」

 と言いつつ、平日は18時間ほど仕事の予定が詰まっているとか。どこにそんな時間が……。

「大事なのは、他の誰かに代替可能なことはしないということ。自分にしか生み出せないアイデア、自分にしか与えられない影響があると信じているので。たとえば領収書の整理はやらない。その1時間で企画10個作れますよね。人に与えられたのは同じ24時間に見えてそうじゃないと僕は考えてます。密度も考慮すると、何倍かの時間を生きることができると思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年9月2日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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