「本人の承諾が取れていないのに部屋から強引に連れ出し施設に連れていくのは、本人の人権が全く無視され犯罪に当たる。親の焦りをあおり、高額な費用を要求しているのも悪質だ」

 クリアアンサーは本誌の取材にこう話した。

「裁判で明らかにしていきたい」

 なぜ、自立支援の過程で人権侵害が起こるのか。20年以上ひきこもり問題を取材してきた、ジャーナリストでNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」理事の池上正樹さんは、「制度の狭間に置かれた課題」だと指摘する。

「ひきこもりという状態に診断名や共通する症状はなく、もし問題があっても『自分に障害はない』、親も『うちの子に障害はない』と考えがち。そのため、支援や福祉などのサポートにつながらないことが多い」

 家族も追い詰められ孤立しているほど、ネットで検索すると上位に表示されたり、テレビで紹介された支援業者に飛びついてしまう。もちろんすべての施設に問題があるわけではない。入居者の意思を尊重し、良心的な入居料で運営する施設もある。どうすれば見分けられるのか。

 池上さんは、「本人が施設への入居を望んでいる」ことを前提とした上で次のように話す。

「本人の意思が尊重されているかどうかが重要。一つの業者の話だけをうのみにしてはいけない。情報は公的な相談窓口や家族会などに問い合わせればありますし、当事者の会に行けば、悪質業者に入った経験者がいることも多く、当事者目線で評判を知ることができます」

 公的な相談先として「ひきこもり地域支援センター」が全都道府県と指定市にあり、KHJ全国ひきこもり家族会連合会のホームページには全国の家族会の連絡先一覧が掲載されている。

 最近は、「自分たちは福祉の人間である」などと言葉巧みに引き出すケースが増えている。同連合会ではそうした情報も収集しながら、見分け方のガイドラインをつくるという。

 前出の考える会では、ひきこもっている人の人権が侵害される状況を変えるべく、「ひきこもり人権宣言」を出す予定だ。(編集部・野村昌二)

AERA 2019年8月5日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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