イランへの強硬姿勢を続けるトランプ米大統領(c)朝日新聞社
イランへの強硬姿勢を続けるトランプ米大統領(c)朝日新聞社
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 緊張が続く米・イラン関係の仲介役として期待を集めた安倍首相。イランの最高指導者ハメネイ師とも会談したが、安倍首相のトランプ米大統領との親密さは、複雑な中東情勢において日本のリスクとなる。

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トランプ大統領は、前オバマ政権が受け入れたイランの核問題における6カ国協議の合意破棄を唱えて当選した。2018年5月に実際に合意離脱を表明し、その後制裁を再開。今年5月にはイラン産原油の輸入を全面的に禁止する措置に踏み切った。日本は禁輸猶予措置の対象となっていたが5月で打ち切られ、輸入禁止に同調せざるを得なくなっている。欧州は米国の制裁回避を模索しているが、難しい状況だ。イランは7月上旬を期限として核開発の一部再開に踏み切ると警告している。

対イランだけでなく、対パレスチナでもトランプ大統領は強硬姿勢をとっている。エルサレムをイスラエルの首都と認め、米国の歴代大統領が20年以上にわたって延長してきた、米国大使館をエルサレムに移転させる法案を承認。18年5月にエルサレムへの大使館移転を実施し、パレスチナでの衝突を招いた。同年1月には米国が3分の1を出資してきた国連パレスチナ難民救済事業機関への支援を停止し、難民の医療や教育が困難になっている。今年3月にはイスラエルが1967年の第3次中東戦争以来、軍事占領しているゴラン高原についてイスラエルの主権を認める文書に署名した。

大統領になるまで外交経験のないトランプ大統領が闇雲にイスラエル寄りの政策をとり続けるのは、来年の大統領選挙で再選するために親イスラエルのユダヤロビーと、キリスト教保守派の支持を取り付けるためと理解されている。しかし、一連の中東政策は分裂を生み、情勢を不安定化させ、いたるところに危機をばらまいている。

 危なっかしい中東政策を繰り返すトランプ大統領の一番のお気に入りとして安倍晋三首相が中東に関わることは、今後、米国が絡む中東危機が起きた時に日本も巻き込まれかねない危うさをはらんでいる。(中東ジャーナリスト・川上泰徳)

AERA 2019年7月1日号より抜粋