では、スクールバス乗り場でカリタス小の児童と保護者が被害を受けた今回の事件はどうだったのか。
カリタス学園は1960年に創設されたキリスト教系の私立学校で、幼稚園、小学校、女子中高を運営する。同学園の関係者はこう話す。
「ほかの私立小学校と比べて特に高いほうではありませんが、小学校の初年度は入学金も入れて100万円以上はかかります。小学1年生から英語とフランス語を教える外国語教育や、カトリック教育が特徴的です」
犯行は行きずりだったのか、最初からカリタス小の児童を狙ったものだったのか。事件後の捜査により、計画的犯行だった可能性が高まっている。
岩崎容疑者の自宅は、登戸駅から小田急線で3駅の「読売ランド前」駅から徒歩15分ほど。岩崎容疑者は事件当日、自宅からまっすぐ駅に向かい、電車に乗り、登戸駅で降りた後、どこにも立ち寄らず事件現場に直行した。そして、犯行はわずか十数秒の間に行われた。
現場に立つと身震いがする。カリタス学園のスクールバス乗り場前の歩道は、身長170センチの記者が大股で歩いて6歩程度で渡れる狭さだ。バス停の向かいに住む79歳の無職の男性はこう話す。
「子どもたちはいつも引率の教師の指示に従って、整列して待っています。バスを待つ間、本を読んでいる子が多かった」
事件当時、バス停には60人を超える児童が並んでいた。事件が起きたのは、バスが到着した直後。朝のラッシュ時で駅に向かう人も多く、狭い場所に固まっていたのは間違いない。列の先頭で児童をスクールバスに乗せていた倭文覚(しとりさとる)教頭は当時の状況をこう話している。
「目の前に犯人が両手に長い包丁らしきものを持って、無言で児童に刃物を振りながら、スクールバスの乗り場のほうに走っていく姿を確認した」
整然と並んだ児童たちを、次々に手にかけた岩崎容疑者。許しがたい凶行に駆り立てたものは何だったのか。岩崎容疑者の自宅近くに住む80代の女性は、事件を受け、約40年前の記憶を思い出した。
「岩崎容疑者が小学生時代だったと記憶していますが、近所の飼い犬がうるさいと血相を変えて怒鳴りこみに来て、町で話題になったことがありました」
最近では約1年前に「庭の木がフェンスを突き抜けて当たった」と隣家に怒鳴りこむトラブルも起こしている。