児童養護施設で育った子どもたちにとって、大学進学という選択には大きな壁がある。そんな中、児童養護施設から社会へ巣立つ子どもたちを支援する行政や企業、大学が増えてきている。
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高校生のうちから将来を見据えて貯金を続けることは簡単なことではない。特に施設で暮らしていると、家計管理や適切なお金の使い方などが身につけにくいとも言われ、進学のための資金を自分で用意できる人は限られる。そんな中、独自に施設出身者へ支援する大学も増えてきている。
中でも青山学院大学では全国的にも珍しい、児童養護施設出身者に限定した推薦入試制度を18年度に始めた。書類審査と面接に合格した生徒は入学金や4年間の授業料が無料になり、さらに月に10万円の奨学金が給付される。この制度で18年度は2人、19年度は1人が入学した。
この春入学した茨城県内の児童養護施設出身の女子学生(18)は、当初は国立大学の受験に向けて猛勉強していたが、昨年9月に施設の職員からこの制度の入試要項を手渡され、青山学院大学を受験した。
「進学したら奨学金を借りて、アルバイトもするつもりでしたが、生活がぎりぎりだなと不安もありました。青学の制度なら、勉強も生活もしていける見通しを立てることができたので、安心して入学できました」(児童養護施設出身の女子学生)
児童養護施設に入所したのは9歳のとき。母一人子一人で暮らしていたが、母親の精神疾患が悪化して育てられなくなり、施設に入った。自宅には自分の机もなかったが、施設では放課後に一つの部屋に集まって宿題をし、土曜日にも学習時間が設けられていたので、自然と勉強するように。学校で月1回行われる計算や漢字のテストで100点を取ったとき、施設の職員がとても喜び、「次もがんばって」と声をかけてくれた。その期待に応えて100点を取り続ける中で、成績が上がっていった。努力すれば点数という結果に表れることも楽しかった。