同大学では、この制度で入学した学生に教員のアドバイザーをつけ、困ったときの相談に乗るほか、月に1度は会って奨学金を手渡しているという。
児童養護について詳しい大阪府立大学の伊藤嘉余子教授もこう言う。
「海外では、社会的養護の子どもに高等教育のチャンスを保障するために、多様な機関が多様な配慮をしています。福祉以外にも、教育、住宅などあらゆるジャンルを含む社会全体の理解と協力が大切です」(伊藤教授)
進学というハードルを乗り越えたとしても、困難は待ち受ける。児童養護施設から社会へ巣立つ子どもたちを支援するNPO法人ブリッジフォースマイルの18年調査によると、大学等に進学した施設出身者のうち16.5%が中退していた。一般進学者の中退率2・7%と比較して大きな差がある。同NPOの林恵子理事長は言う。
「行政や企業、大学の支援は拡充してきていますが、それらのほとんどが順調に生活できている学生のためのプランニングです。風邪を引いてバイトに行けないだけで生活費が足りなくなる人や、対人関係がうまく築けずに大学へ行けなくなる人、留年すると学費の助成はなくなってしまい退学を選ぶ人もいます。入学して終わり、ではなく、彼らがやり直すためのセーフティーネットも必要だと思います」(林理事長)
(編集部・深澤友紀、アサヒカメラ編集部・作田裕史)
※AERA 2019年6月3日号より抜粋