この違いについて増澤さんはこう話す。

「テレビだけで届く層と、放送後に少し時間がたってから、ネット経由でコンテンツに触れてくれる層に分かれているのだと思います。今は若い世代でテレビを持っていない人もかなりいますし、生放送をずっと視聴するのが難しいという事情もあると思います」

 紅白の放送時間は1部と2部を合わせると4時間半に及ぶ。一方、コンパクトにまとめられたアーティストのパフォーマンス動画は、すべて見ても1時間もあれば楽しめる。タイパ(タイムパフォーマンス)に敏感な若者にとって、この差はかなり大きいだろう。

「再生回数の数字からも、若い世代に届いたと思います。さまざまな事情で生放送を見られなかった人も、スマホ1台あればYou Tubeやツイッターなどにアクセスして、放送後でも紅白を楽しめる。そこをフォローするのが新しい紅白のあり方であり、目指すべきものだという感じがしています」(羽村さん)

 実際に放送終了後に紅白を見た視聴者は多かったようで、同時配信・見逃し配信の「NHKプラス」での視聴数がUB(ユニークブラウザ)数で約120万になり、同サービス開始以降、配信した全番組の中で初の100万超えを記録した。

 結果的に、デジタルチームが運用した紅白関連のSNSは、ツイッターだけで投稿数が約500。これにYouTube、インスタグラム、LINEの投稿数を加えると1000を超えた。

 SNSでシェアされたことで、見逃した人を「NHKプラス」へと誘導できた、という点ではNHKが掲げた目的は達成できたと言えそうだ。

 ちなみに、見逃し配信には「NHKオンデマンド」というサービスもあるが、こちらは月々の料金が必要になる。「NHKプラス」は放送を補完するサービスという位置づけで、受信料ナンバーがあれば無料で視聴できる。

 現在は「補完」であるゆえ予算も制限されているが、近い将来「本業」に格上げになるのではと、民放各社は危機感を募らせる。日本民間放送連盟などからは「受信料はテレビ放送を前提として徴収しているにもかかわらず、インターネット事業に転用するのはいかがなものか」という声も上がっている。

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公共放送であるがゆえの「制約」