妊娠中は猫の排泄物に注意
臨床的にも、精神疾患の患者さんでトキソプラズマ抗体の陽性者が多いことから、猫はトキソプラズマを介して人間を操っており、世界各地に伝わる怪猫伝説は本当だったというセンセーショナルな報道につながった。しかし、これには一部の研究者が研究成果をかなり恣意的にとりあげ、マスコミもこれに便乗しているという反論もある。
正確な臨床データがないことから、「トキソプラズマが国芳を操って猫の浮世絵を量産させた」という一見魅力的な仮説は実際のところ何とも言えないことになる。もちろん、トキソプラズマは重要な母子感染の病原体であるから、日常生活で妊娠中は新たに猫を飼わない、猫の排泄物に触れない、生肉を食べないといった一般的注意を守ることは重要であろう。
(文/早川 智)
※AERAオンライン限定記事