会場では参加者たちが「絵」に悪戦苦闘しているが、なぜ絵でなくてはいけないのか。

「言葉を使うより手を動かした方が、その人の無意識下にあるものが現れやすいんです。描いた絵を題材に、他の人から質問してもらうんですが、答えていくうちに自分でも言語化できていなかった思いや課題が明らかになってきます」(同)

 絵を見せながら本人による説明が始まる。職場で取り組んでいるプロジェクトについて熱く語る人もいれば、家族の話をする人、副業や転職の悩みを吐露する人などさまざまだ。

 5分経ったところで、今度は質問タイム。「いまの仕事に満足していますか」「嬉しいと思える瞬間は?」「怖いものって何ですか」。初対面で利害関係も一切ないからか、職場や友人同士では面と向かって聞かないような質問がポンポン出てくる。

 続いていよいよ他人の目標を立てる段になったが、A4用紙を前に手が止まっている人もいる。すると三石さんが、すかさずアドバイス。

「『私が○○さんだったら』という枕詞を必ず入れてください。第三者の視点だと『~すべき』なんて押し付けになっちゃいますからね。そうではなく、思いっきり主観で当人になりきるのがポイントです。目標に『正解』はありません。あえて無責任に大胆に書いてください」

 目標を書き終わったら、当人に向けて1人4分程度でプレゼンする。その内容に「なるほど」とうなずいていたのは、業務用ソフトウェアメーカーに勤める片山聖さん(38)。提案された目標は「一人旅をする」だ。

 片山さんは状況説明の際に、「仕事にも妻と3人の子どもとの暮らしにも満足している。5年後10年後を見据えて副業も含めて新しい働き方を模索中」と語っていた。その片山さんになぜ「一人旅」なのか。提案した人に聞こう。そのココロは?

「片山さんの現状はとても素晴らしいと思うんですけど、このままだと『新しい副業』もいまの延長線上の付け足しになっちゃうかなと。僕だったら、これまでのことを一旦白紙にします。今の環境だと『旅行は家族で行くのが当然』と考えると思うんですけど、そこをあえて1人で行く。そこで何か発見できることがあるんじゃないかな」

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