AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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ロブ・ライナー監督(72)といえば「スタンド・バイ・ミー」(1986年)や、「恋人たちの予感」(89年)を思い浮かべる人も多いだろう。が、昨年の「LBJ ケネディの意志を継いだ男」に続き、本作も実話を基にした社会派ドラマだ。
9・11後、イラク戦争へと突入したアメリカで唯一「イラクに大量破壊兵器はない」と確信し、報道を続けた中堅新聞社「ナイト・リッダー」の記者たちの闘いを描いている。
「僕も当時からイラク侵攻という“目的ありき”な戦争に疑問を感じていた。なのにニューヨーク・タイムズのような有力紙もテレビも、みなウソにまみれた政府の発表を市民に流している。狂気の沙汰としか思えなかった。これは映画にして世間に知らせるしかない。そう思っていたとき、この記者たちの存在をドキュメンタリーで知ったんだ」
9・11の悲劇を経て米国民に芽生えた強烈な「愛国心」をブッシュ政権は利用し、大手メディアもそれに便乗した。そのなかで「なにかがおかしい」ことに気づき、真っ向から政府の発表に抗う記事を発表した彼らは、身内にすら非国民扱いされ、孤軍奮闘を強いられる。
「政府が自分たちの目的をかなえるために、どんな手段やプロパガンダを行うのか。これはトランプ政権下でリアルに起こっていることでもある。自由で独立したメディアの存在が、いかに健全な民主主義に欠かせないものであるかを、この映画で伝えたかった。民衆は愚かではないし、常に真実を知りたいと思っている。こうした政府のウソを回避するには、一般の人々が正しい情報を持つことがなにより必要で、ナイト・リッダーの記者たちはそれをやったんだ」