構想から15年。その不屈の精神はまさに“記者たち”に通じる。ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズらが扮する記者たちには、全て実在のモデルがいる。監督自身も、劇中で記者たちを引っ張る支局長ジョン・ウォルコットを存在感たっぷりに演じている。
「記者たちが逆風と困難のなかでモチベーションを保てたのは、ジョンがいたからこそだと思う。正しき道を示すリーダーの存在は大きいね」
少年の成長物語や洒脱なラブストーリーから、社会派に変化した理由は?
「一番は年を重ねたからかな。もともと政治には関心があったけれど、現実的にこうした題材を扱うことが商業的に難しいことも知っている。でも、もう72歳だし、自分のやりたいことをやり、描きたいものを描いたほうがいいと思った。それにいまやっておかないと、いつクビになるかわからないからね(笑)」
意外にも今回が初来日だ。
「ずっと来たかったから嬉しいよ。京都も行ったし、小田原にある写真家・杉本博司の素晴らしい美術館にも行ったよ。え? まだ行ったことがない? 絶対行くべきだね!」
◎「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」
不屈の精神で真実を伝え続けた実在する記者たちの物語。全国で公開中
■「スポットライト 世紀のスクープ」
正義感に溢れ、真実を追って奮闘するジャーナリストたちの物語は観客の心を熱くする。「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)も、そんな記者たちの真実の物語だ。「扉をたたく人」(09年)などで知られるトム・マッカーシー監督が、03年にピュリツァー賞を受賞した「ボストン・グローブ」紙の記者たちの奮闘を描き、アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞している。
01年、ボストン・グローブ紙は地元でカトリック司祭の神父による性的虐待が起こっているとの情報を掴む。特集取材班「スポットライト」チームの記者マイク(マーク・ラファロ)、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)らは粘り強い取材の末、大勢の神父が虐待に関わっている真実に近づく。だがカトリック信者の多いボストンで、彼らはさまざまな妨害を受けることになる──。
度重なる困難のなか、彼らを奮い立たせるのは名誉欲などではなく、自分を信頼し、つらい出来事を告白してくれた被害者たちへの思いと責任だ。巨大な権力との闘いに彼らは勝利することができるのか? 「胸アツ」間違いなしの一本だ。
◎「スポットライト 世紀のスクープ」
発売元・販売元:バップ
価格3800円+税/DVD発売中
(ライター・中村千晶)
※AERA 2019年4月8日号