かわいくて、優しくて。手の中に収まるのに、おもちゃらしからぬ本物感もある。日本で1980年代にブームが起きた「シルバニアファミリー」の根強い人気は健在だ。動物たちが作り出す穏やかな世界観は海を渡り、いまや世界中で多くのファンの心を捉えている。
【写真特集】かわいいシルバニアファミリーの世界!(全14枚)
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鳥のさえずりに、川のせせらぎ。丘をいく風が頬をなで、村の暮らしの音までしてきそう──。リビングの横にある引き戸を開けると、水色の異空間が目の前に広がった。みずいろさん(30)が自宅に作ったシルバニアファミリーのコレクションルームだ。約1千体の人形と約30の家やお店が並ぶ。
「この部屋に入ると、童心に帰れ心が落ち着きます」
みずいろさんはそう語る。シルバニアファミリーで遊んだのは小学校低学年のころ。家や店を舞台にお話を作っては友だちと遊んだ。小学校中学年でいったん離れ、再び戻ってきたのは20歳のころ。東京・お台場に遊びに行ったとき、たまたまシルバニアの専門店を見つけ入った。
「かわいい!」
懐かしさがこみあげ瞬時に心がとらえられた。10年の間にラインアップはさらに充実。子どものころ両親に買ってもらえず、1個しか持っていなかった反動も出たと、みずいろさんは笑う。
とりわけ本物感や異国感の強い、発売初期やイギリスのフレアー社が一時期扱っていた商品群にはまり、リサイクルショップや海外のネットオークションをまわっては買い集めた。娘(4)が生まれると、娘用にも買ったが……。
「別のおもちゃに夢中で。思い通りにいかないものです(笑)。家族が寝静まったあとこの部屋で、コレクションをどう飾ろうか考え、工作するのが至福のときです」
玩具メーカー・エポック社がシルバニアファミリーを発売したのは34年前。子どものころ遊んだ世代が大人になって再び戻り、SNSなども通じて静かなブームが起きている。3月、東京・松屋銀座を皮切りに初の大規模展が始まり巡回する予定だ。9種類でスタートした動物の家族は現在までに約70種類が登場し、人形の世界累計販売数は1億5千万体以上にのぼる。しかし、その道のりは決して平坦ではなかった。