インフルエンザの感染が拡大している。全国の推定患者数は222万人を超え、過去最多となった。どう予防すればいいのか。
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「やれることはすべてやる。ワクチン接種はもちろん、徹底して感染機会を減らす努力をしています」
池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは、呼吸器内科が専門。インフルエンザ患者と接する機会は一般人より遥かに多く、感染リスクも高い。しかし、東京医科歯科大学病院に在籍していた2002年に一度、ワクチン効果が切れた4月中旬に感染してしまった時を除き、インフルエンザ発症経験はゼロだ。
大谷さんは流行シーズン前から、マスクを手放さない。注目すべきは、その枚数だ。診療日は1日20枚以上、休日も外出ごとに取り換えるので、1日4枚以上マスクを使う。
「ある製薬会社の調査では、マスクの取り換え頻度を『1日1回』と答える人が最多でした。しかしこれでは、マスクの表面に付着したウイルスが今度は手などに付着し、鼻や口から感染する。接触感染の機会を増やしているのです」(大谷さん)
マスクは顔にフィットする大きさのものを選び、一度外したら、新しいものに換える。マスクを外す時はゴムひもだけを持ってマスクに付いたウイルスに触れないようにし、念のために石鹸で手洗いをする。ここまでやって初めて、マスク装着がインフルエンザ予防につながる。
「マスクには、くしゃみなどによる飛沫感染予防、手が鼻や口に触れにくくなることによる接触感染予防、そして鼻や喉の湿度を保ちウイルスが生存しにくい環境を作るという、三つの利点があります」(同)
インフルエンザウイルスは日常生活で触れるさまざまな場所に存在する。金属やプラスチックなど表面が平らな物質では24~48時間生存し、ウイルス活性は24時間持続。衣服、紙や繊維では8時間生存し、ウイルス活性は15分。これらの接触感染を極力回避するため、大谷さんはドアノブを触る時も、指を使わず手首を使う。パソコン、電話、スマートフォン、机などはアルコール消毒し、頻繁に手洗いする。手洗いでは石鹸を使い、手のひら、手の甲、指の間、爪先、手首まで30秒以上かけて入念に洗う。タオル、バスタオルは共用せず、できればペーパータオルを用いる。さらにアルコール消毒液を手に揉み込む。