胃がんはバリウム、肺がんは胸部エックス線で──。そんながん検診の常識が大きく変わりつつある。AERAでは最新事情を専門医に取材。さらに医師専用コミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」の協力のもと、がん診療経験のある医師540人にアンケートを実施。早期発見につながるがん検診の選び方を聞いた。
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「今年の検診、何も出なかったから、ひと安心だな」
40代、50代にさしかかれば、がんの有無は大きな関心事だ。職場や自治体で受けられる成人検診を健康指標にしている人も多いだろう。
だが、成人検診に含まれるがん検診の内容は、自治体や職場によってかなり違う。
肺がんには胸部エックス線検査、胃がんにはバリウム検査、大腸がんには便潜血検査、乳がんにはマンモグラフィーと視触診などが一般的とされる。このなかにはスクリーニングには向いているが、がんを発見する手法としては時代遅れになりつつあるものもある。検診結果を過信すると、発見を遅らせることにつながりかねない。
検診の内容を正しく理解していれば、早期発見できたかもしれないのに、病院にやってきた時にはがんがあまりに進行していた──。
『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』の著者、近藤慎太郎医師は、そんなケースを臨床の現場で多く見てきた。
「検診の種類によっては、自分のがんのリスクに見合わないこともあります。こうした情報格差、それによって生じる医療格差は、そのまま人生の格差につながりかねません。難しく感じるかもしれませんが、正しく理解してほしい」
そこでAERAは、がん診療経験のある医師540人にアンケートを実施、自分なら受けるがん検診を選んでもらった。詳細は後述するが、医師の選択は最新の医療情報をシビアに反映していた。
2人に1人ががんになるといわれる時代、がんのリスクを正しく下げるために、がん検診の理解のしかたと適切な選び方を見ていこう。
都内の会社員の男性(53)も、毎年、会社指定の成人検診を受けている。胃がん検診はバリウム(胃部エックス線検査)だ。ストレスもそれなりにある職場なので、胃の調子は気にかかる。毎年、バリウムは気合を入れて飲んでいる。
「バリウムを飲むのは割と得意ですね。発泡剤でサイダーのような感触になるので、ごくごくいけます。ゲップの我慢もぼくはあまりつらくない」(男性)
だが、このバリウム検査こそ、情報を更新すべきがん検診のひとつだ。