実際に離脱が可能になる20年11月は、自身の再選をかけた大統領選と時期が重なる。それまでの間、離脱を最大の武器にして各国を揺さぶりながら、自国にとって優位な合意の形成を模索する。史上最悪の山火事やハリケーンなどの自然災害が頻発する米国で、世論が高まれば、今度は離脱撤回をLeverageにして、米国有利の条件をパリ協定で勝ち取ろうとすることもトランプ大統領なら十分にあり得る。
空中分解した京都議定書と異なり、先進国も途上国も「公平」な削減義務を持たせることで、各国によるギリギリの譲歩を得たパリ協定は、いつ崩壊してもおかしくない薄氷の合意だ。各地で歴史的な異常気象が現実となる今、パリ協定を「最後のチャンス」と認識する人は多い。「トランプ・エフェクト」の広がりを食い止めながら、ディール外交に酔うトランプ政権をパリ協定に引きずり戻す良策を見いだせるか。各国政府のみならず、地球温暖化の直撃を受ける世界中の市民一人ひとりの危機感が試されている。(アエラ編集部・山本大輔)
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