(1)化石燃料に投資することの魅力を国際的に引き上げた。


(2)協定離脱の道徳的、政治的な言い訳を他国に与えた。
(3)国際交渉の信用を傷つけた。

 超大国である米国がお墨付きを与えることで、国際的な傾向に背を向けるリスクを軽減し、国際社会全体の利益と相反することでも実施しやすくなる。自国優先、業界優先、自社優先といった個別の利益を求めやすい環境を作り出していることが、トランプ・エフェクトの最大の罪だ。ただ、トランプ政権の環境政策を米国民が強く支持しているわけではない。

 米イェール大学が全米を対象に今年実施した世論調査によると、国民の70%が「地球温暖化が起きている」と認識し、61%が悪影響を心配していると答えた。環境保護は経済成長よりも重要と答えた人も70%に及んだ。また、再生可能エネルギー研究への資金提供、CO2を汚染物質と認定した上での規制、化石燃料関連企業への課税、太陽光パネルや省エネ自動車への減税措置など、パリ協定の趣旨にあうような政策については全て半数を超える賛同があった。少なくとも6割が、市民や連邦議会が地球温暖化問題を積極的に取り上げるべきだと答えた。

 トランプ政権の環境政策が、第一優先と公言する自国の世論に必ずしも即していない現状を浮き彫りにした形だ。

 それではなぜ、トランプ政権はパリ協定に背を向けるのか。

 化石燃料業界が支持母体の一つになっていることが取り上げられるが、それだけではない。パリ協定に限らず、環太平洋経済連携協定(TPP)などの多国間貿易協定やイラン核合意といった国際合意にかたくなに背を向けるのは、米国の主張が最大限反映された米国主体の枠組みになっていないからだ。米国の利益を最優先で促進できる内容ならば国際的な枠組みは大歓迎。そうでなければ二国間交渉を望むというのが、トランプ政権の目指す自国第一主義の本質なのだ。

 各国が関与する国際協力が不可欠な地球温暖化対策は、米国抜きでは絶対に実現できない。それを知っているからこそ、離脱の意思を明確に表明することが、トランプ大統領の口癖である「Leverage(目的実現のための影響力)」になる。

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