埼玉県春日部市立豊野中学校バスケットボール部で男女の顧問を務める田中英夫さん(60)は、昨年度の全国中学総体で女子を2連覇に導いた。今夏は関東大会で力尽きたが、県新人戦では男女アベック優勝。

 この戦績を聞くと、よほど猛烈な練習をしているのかと思うが、練習時間は春夏は夕方6時までの2時間、秋冬は5時下校に変わるため45分しかない。

「選手たちが自分たちでメニューも決めてどんどんやる。僕は練習メニューを工夫しているだけ」

 と田中さん。徹底的に練習を「主体的に」することで、時間は短くても、強くなるための効果的な練習になるのだという。主体的にやる45分のほうが、受け身でやらされる2時間よりもよほど力が身につくのだ。

「昔は、ただ怒鳴ってばかりだった。でも、前任校の時に、小学校時代ミニバスで技術を身につけた子が入ってきたら、子どもたちの主体性を重視すると結果が出始めた。これは子どもに任せたほうがいいなと少しずつ気づいた」(田中さん)

先生たちが部活を“ホワイト”にしたいと思ったときに、意外と壁になるのが「親」の存在だ。特に強豪校では、親たちが過熱して結果を求めるあまり、長時間の練習や厳しい指導を支持するケースもある。

 東北地方のある県では、中高とも夕方6時には完全下校を徹底しているが、「部活後の練習会」が実施されるところがある。親が公共の体育館やグラウンドを予約、そこに移動して親主催という形で、夜遅くまで延長部活が行われるというのだ。

 前出の田中さんは、過熱しがちな親たちに、「バスケがすべてではない」と諭している。部員たちには、「バスケじゃないところでもリーダーになれ」と生徒会などにも取り組むよう伝える。「他での経験」が部活にも還元されるからだ。(ライター・島沢優子)

AERA 2018年12月10日号より抜粋

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