子育てにまつわる情報は人によって、時代によっても異なるもの。にもかかわらず、周囲からの同調圧力に悩まされることもあるのでは。産婦人科医・宋美玄さんには、子育てで目指す母親像があるという。
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医師として多くの患者に向き合いながら、小学1年生の娘と2歳の息子を育てる宋美玄さん。ブログやインスタグラムでは、一人の母親として、日々の子育ての様子を「しんどい」「めんどくさい」と率直に綴っている。
「子育てって難しいなと思います。今朝も、娘が『眠いから学校行かない』とか『断固休む』とか言い出して、朝から大変でした。結局登校していったけど、私は化粧をする時間もなくなり、すっぴんです。この取材、撮影もあるんでしたね……」
下の子もイヤイヤ期真っ盛りだ。
「言い聞かせてもまだ分からない、要求は無限、満たされないとキレる、の三重苦の時期」
つい先日、こんなことがあった。ツイッターで、新幹線で販売されているカップアイスは、硬いので2歳児が30分近く騒がずに食べ続けられる「神アイテム」というツイートが流れてきた。
宋さんは「うちの2歳児は逆」と思った。アイスを目の前に食べられずに泣き叫ぶ息子の動画をSNSでアップすると、7万回以上も再生された。
「もう新幹線のアイスは買わない(笑)。子育てを知らない人やいわゆる“育てやすい子”の母親からすると、うちの子たちのような子は理解されにくい。育てるのがしんどい子もいるのに、発達が平均的だと『しんどい』と言える場がないんですよね。子どもは一人一人違うのに」
こうした宋さんの「しんどい子育て」の発信に、母親たちから「救われる思い」「うちもそうです」といった声も多く届くという。
目指すのは「まあまあの母親」。イギリスの小児科医、精神科医のドナルド・ウィニコットの「最良の母親とは、まあまあの母親である」の言葉だ。
子育て中の多くの母親を追い詰めるのが、早寝早起きをさせる、バランス良く食べさせる、といった子育ての教科書的アドバイスだが、宋さんは「気にしない」という。