石破:我が水月会(石破派)は20人しかいないので単独で勝てるはずがない。今回、献身的に動いてくれたのは参議院平成研究会(竹下派)ですよ。確かに森友・加計問題は国民の関心が高いんだけれども、最初にキャッチフレーズで「正直、公正」をアピールしたわけだから、これからは政策でやろうという意見が出たんです。そこに配慮したのは事実。
誰が何と言おうが、俺はこれだけでやるということも随分考えた。けれども、それだけで行ったとしたら、あれだけの票が出たかどうかは分からない。だからこそ、もっと時間は欲しかったよね。安倍さんは森友・加計はひたすら逃げるしかない。そうなると政策論争の場を短くするというのは、当然の戦術ですよね。それにしても総裁選の期間に外遊(9月10~13日にロシア訪問)するのはいかがなものかと思うけどね。
──北朝鮮の拉致問題に関して、安倍首相が総裁選の討論会で「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはありません。ご家族でそういう発言をされた方がおられることは承知をしております」と発言し、周囲を驚かせました。自民党における「拉致問題の解決」とは何を指しているのでしょうか。
石破:安倍さんは国会で「全ての拉致被害者のご家族がご自身の手で肉親を抱きしめる日まで、私の使命は終わりません」と発言しています。安倍さんはトップ会談でやると言ってるわけですよ。けれども向こうはトップ会談に応じるような状況なのでしょうか。北朝鮮の言っていることって、100%、全部うそなのかと。彼らだって本当のことを言わないと前進しないことはわかっているからね。だからお互いの国に連絡員事務所を置いて、これはどうなんだ、これは本当なのかっていうのを、一つ一つ検証するのが、私は正攻法だと思いますよ。今までそんな信頼関係をつくってきた相手ですか。
あのトランプ大統領も「パールハーバーは忘れない」と言い、米軍横田基地に降り立ち、そこに自衛官が呼びつけられたんですよ。何なんだこれはと思いますよ。パールハーバーを忘れないって、なんで言われなきゃいけないの。だから個人的な信頼関係と国益は別だって言っているのであって、それは外交の常として、一つずつ前進していかなきゃしょうがないでしょう。「一人残らずその手に抱きしめるまでは私の使命は終わりません」と言ったほうがいいだろうけどね。でもそれが解決を早めましたか。それでもなおそれを言い切るのはすごいもんだと。
──次の総裁選(安倍首相の任期は21年9月まで)にも出馬されますか。
石破:自分がやんなきゃいけないようであればね。この10年で企業の利益は163%に増えたのに、売り上げは98%ってどういうことだと。高度経済成長期で売り上げがガンガン伸びているわけでもないのに、労働分配率を下げるというのは絶対にやってはいけない。安倍さんは、景気が良くなる時ってこんなもんだと言われますが、それは違うでしょうと思ってしまいます。
(構成/AERA編集部・中原一歩)
※AERA 2018年10月8日号