9月20日投開票の自民党総裁選で、現職の安倍晋三首相に単騎、戦いを挑んだ石破茂・元自民党幹事長。国会議員票では大差をつけられたが、地方票では善戦。AERA本誌の単独インタビューで、次の総裁選にも意欲を見せた。
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──自民党総裁選での「安倍圧勝」に対し、「石破善戦」と言われている結果を、どのように受け止めていますか。
石破:国会議員の投票行動は、まず自分が所属する派閥の長の意向があり、それぞれの議員が「役職をもらって活躍したい」とか、「次の選挙で有利に戦いたい」とか、特有の基準があるものです。けれども、地方の党員の方って、安倍(晋三首相)さんに忠誠を誓ったからといって町長さんにしてもらえるものでもない。つまり、判断の基準が違うってことなんです。党員票にも「団体票」と「地域票」があります。前者は団体の利害によって決まるので、権力を持っているほうに流れる傾向にある。つまり、残った地域党員の一票が、一般国民の感覚に一番近いのではないかと思っています。その意味では181票をいただいた地方票の意味は重いと考えています。
──安倍首相は「自由闊達な議論ができた」と発言しています。一方で、安倍首相支持の議員が、石破派に所属する齋藤健農林水産相に対して「石破氏を支持するなら辞表を書け」と迫ったという発言が飛び出し、驚きました。
石破:これが農水大臣として立派な仕事をし、省内の評価も高い人に対して言えることなんですか。自民党公認で有権者に選ばれ、国会に議席を得ている同志ですよ。誰が言ったのか知りませんが、「政権が大事であって国民はそうじゃない」ということだとすれば絶対におかしいでしょ。私には理解できない。
安倍さんは閣僚人事でよく「適材適所」という言葉を使われます。本当にそうなっているかといえば、そうでない人事がいっぱいあったじゃないですか。疑惑の当事者なのに、一度も記者会見を開かない国税庁長官のどこが適材適所なんですか。自分の側の人には適材適所と言い、そうでない側の人には辞めろと言うのは、権力というものを取り間違えていないかと思うんです。私はそんな自民党であってほしくない。国民に受け入れられるとも思わないです。
──安倍首相は、田中角栄、福田赳夫両元首相が1970年代から80年代前半に繰り広げた党内抗争を引き合いに「角福戦争のころは、こんなもんじゃない」と発言し、事実上、齋藤農水相への発言を問題視しませんでした。