石破:あの時代は中選挙区で、派閥同士が本当に争っていた時代です。それに今では考えられない額の「カネ」が乱れ飛んでいました。各派閥が地方の議員を奪い合う。上京すると聞くと、「東京駅で迎えていてはだめで、横浜駅でつかまえないといけない」「いや熱海駅でつかまえて説得しろ」だとか、各陣営が勝つためなら何でもありの選挙戦をやっていたんだと思います。
けれども、自民党は「政治改革」を合言葉に、そうしたかつての体質を否定して今があるのではないかと。圧力とか恫喝(どうかつ)とかじゃなく、真摯(しんし)に政策を争い、議員一人ひとりが己の信条にしたがって一票を入れる。それこそ、公正で正直な自民党にしようという思いでやってきたのだと思います。今は社会が、政界にしてもスポーツ界にしても、パワハラが横行していて、不正に対して「それは違う」と勇気をもって物を言った人がさらに弾圧を受ける。きれいごとを言うようだけど、自民党は「社会の範」たらねばならないのではないか。それって政治家として当たり前のことだと思うんです。
──「石破は干される。次はない」などの噂が永田町には流れています。
石破:統一地方選だって来年の参議院選挙だって、自民党員だけでやるんじゃない。一般の国民全員を対象としてやるんですよ。そうであるならば自民党の好感度って大事じゃないですか。総理が「これだけ自分に対する反対票が出た。石破が言っていたことを支持する人がこれだけいるんだ。そういうことを踏まえて政権運営に当たりたい」とおっしゃるか、一票差だろうと勝ちは勝ちだということで突き進まれるのか、それは分からないですよ。けれども、仮に後者であるならば、選挙の意味ってなんだろうかね、ということにならないですか。
──政策論争では、これまでの実績をアピールする安倍首相と、日本の将来をどうするかに重点を置く石破さんとで主張が分かれたように思えます。
石破:安倍さんは、実績は語ることはできても将来は語れない。私が問いたいのは人口急減に直面する日本の舵取りです。これをこのまま放置すると日本の社会が維持できない時が必ず来るんです。2040年には今から人口が2千万人減って、高齢者数がピークにあるわけですね。社会保障給付は1.6倍に増える。このままでは絶対に維持できない。また交戦権なき自衛隊が他国の軍隊と本当に戦えるのかという問題。この災害列島にあって、防災省って本当になくてもいいのか、など課題は山積です。
──本当に首相のポジションを狙うのであれば、総裁選でなぜ国民の関心が最も高い「森友・加計」問題を議論しなかったのでしょう。