男性は「自分だけの給与で家族を養えるまでは」と結婚に踏み切れず、一方女性は、「いつか結婚して“永久就職”をすればいい」と非正規雇用を選んだものの、気付けば未婚のままアラフォーという人もいる。
実際、女性の非正規未婚の数は多い。17年の労働力調査によると、アラフォー世代(35~44歳)の非正規雇用率は3割弱。男性は9.2%だが、女性は52.5%にもなる。また、非正規で働くアラフォー女性のうち67.7%が未婚だ。
新卒時は正社員で就職したが、転職を重ねて今は契約社員として働く未婚の女性(40)は言う。
「下の世代の女性は、結婚してもしなくても一生働くつもりで就職している人が多い印象。正社員として着実にキャリアを重ねる彼女たちを見ていると、自分の浅はかさに腹が立って……」
中には、結婚=安定のチャンスだからと、交際相手からのDVにも我慢している人もいる。11年からデートDV(婚姻関係のない交際間で起きる暴力)の電話相談を行う認定NPO法人エンパワメントかながわの阿部真紀理事長によると、出産のリミットが近づいているアラフォー女性の中には結婚への強い執着や経済的な事情で別れられないと考えるケースも目立ち、両親やきょうだいも疎遠だと「この人と別れたら独りになってしまう」と思い込んで被害が深刻化してしまう人もいるという。
NPO法人ほっとプラス(さいたま市)で生きにくさを抱える人たちの相談業務や支援を行う社会福祉士の藤田孝典さん(36)はこう指摘する。
「いま働く人の6割が正社員ですが、就職氷河期以降、正社員のうち3分の2は正社員とは名ばかりのブラックな働き方を強いられ、賃金も上がらない『2級正社員』です」
過重労働などで心身を壊す人も増えていて、全国健康保険協会のまとめによると、17年度に傷病手当金を支給した傷病の1位はうつ病などの「精神および行動の障害」で28.6%。この20年余りで6倍以上に増えた。
不安定な雇用は転職氷河期世代ばかりでなく、下の世代にも広がり、新卒時に非正規という人は年々増えている。藤田さんは言う。
「就職氷河期世代以降は雇用も不安定で簡単に生活困窮に陥るのに支援が極めて少ない。日本全体の問題として現実と向き合っていく必要があるし、私たち自身が当事者として政治や政策に訴えていくことも大切だと思います」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2018年10月1日号より抜粋