1990年代半ばから00年代前半に社会に出た就職氷河期世代。学校卒業後、長期に渡り非正規労働の余儀なくされるなど、辛酸をなめ続けてきた。今やアラフォーを迎えているこの世代の女性たちは、特有の生きづらさに直面している。
* * *
『非正規・単身・アラフォー女性』の著者で自らも氷河期世代の作家、雨宮処凛さん(43)は言う。
「私たちの世代は厳しい働き方を強いられ、30歳すぎにはリーマン・ショックで派遣切りに遭った人も多い。みんなが不安を抱えています」
雨宮さん自身も、将来への不安をかき立てられるような出来事があった。40歳を過ぎた2年前、賃貸マンションの入居審査に落ちたのだ。不動産会社の担当者は、仕事がフリーランスの上、保証人になった父親が65歳以上だったことが原因ではないか、と推測した。20代の頃は年収100万円台でも部屋を借りることができたのに、その数倍稼ぐようになった今、断られてしまう。この20年間の頑張りを否定されたような気がした。
結局、家賃保証会社を利用できる別の賃貸マンションを契約。家賃のほかに、毎月7千円余りを保証会社に支払っている。雨宮さんは言う。
「この社会は、『単身で生きていく中年女性』ということが想定されていないから、生きづらい場面が多い」
経済的不安定さは、人生の選択肢も狭める。アラフォー世代は、働いて生活していくことに必死で、結婚や出産を経験していない人も少なくない。アラフォー世代の未婚率は増加しており(グラフ)、15年の調査では40~44歳で男性の約3割、女性の約2割が未婚だ。氷河期世代の一部は団塊ジュニア世代(71~74年生まれ)にあたるが、経済的事情や未婚・晩婚を背景に出生率も低迷し、第3次ベビーブームは起きなかった。
「必死に働きやっと経済的に安定したのが30代半ばという人も少なくない。その頃には婚活市場では不利で“卵子の老化”まで畳みかけてきた」(前出の雨宮さん)
慶應義塾大学出身の女性(43)は、今ではPR会社の部長職に就くが、新卒時には内定がもらえずに、学生時代のアルバイト先の契約社員として社会人をスタートした。30代半ばまで履歴書の欄に書ききれないほど転職を重ね、休日・深夜関係なく働いた。6年前に今の会社に入社して、やっと生活が落ち着き、38歳で結婚。それまでは結婚など考える余裕もなかったという。
この世代は、父親がサラリーマン、母親が専業主婦という高度経済成長期の日本の典型的な家庭で育った人も多い。経済が右肩下がりの今、親世代の家族モデルをめざすことなど不可能なのに、そこに幻想を抱いてしまう面もある。それも、生きづらくさせる要因の一つだ。