小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
<br />
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
この記事の写真をすべて見る
平昌五輪にも、大勢のボランティアが参加した。韓国・江陵で報道陣の求めに応じ、手を振るボランティアたち (c)朝日新聞社
<br />
平昌五輪にも、大勢のボランティアが参加した。韓国・江陵で報道陣の求めに応じ、手を振るボランティアたち (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【この記事の関連写真はこちら】

*  *  *

 前号では、東京オリンピックのボランティアがネットで言われているような日本独自の国家総動員体制なのか調べてみたら、ロンドンでもリオでも平昌でも大量に募集していたことがわかりました。だけど、オリパラ組織委員会のボランティア戦略(サイトで公開)を読んでいると、どうもモヤモヤします。

 東京五輪の大会ビジョンは「全員が自己ベスト・多様性と調和・未来への継承」なんだとか。で「都民・国民一人ひとりに大会成功の担い手になってもらうことが必要不可欠であり、その中でも『ボランティア』活動への参加は(中略)、他では決して得られない感動を体験する貴重な機会となる」とあります。そして「ボランティア一人ひとりが『おもてなしの心』や『責任感』など、日本人の強みを活かした活動を行うことが大会の成功の重要な要素となる」のだと。

 日本人の強みを生かした活動? ボランティアは「年齢、性別、国籍、障がいの有無等にかかわらず様々な人々が」活躍できるようにすると謳っているのに。応募するのは何も日本人とは決まってないぞ。外国から参加する人もいるし(リオでは2割が国外から)、日本在住の外国人でボランティアをしたい人もいるはず。世界有数の大都市で開くオリンピックで強調するべきは、民族の美点ではなくて国際都市の豊かさではないの? 訪日外国人へのおもてなしばかりが強調されているけど日本には、すでにたくさんの外国人が暮らしています。日本人らしさに酔うよりも、いろんな仲間がいることを大事にしたほうがいいのでは。それが多様性と調和、ってことではないんでしょうか。

 オリンピックを機にボランティア休暇を取りやすくしたりして、日本にボランティア活動を根付かせようというのはいい試みだと思います。だけど、日本人らしさとかボランティア美談みたいなもので動員しようとしないでほしい。無理せず、ボランタリー(自発的)に、楽しんでやればいい。感動的でなくたって、助け合いはできますから。

AERA 2018年9月10日号

著者プロフィールを見る
小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

小島慶子の記事一覧はこちら