


AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
【かわいすぎる!「皇帝ペンギン ただいま」の場面写真はこちら】
* * *
■いま観るシネマ
「前作『皇帝ペンギン』を撮ったあと、南極には何回か行ったけれど、彼らの繁殖地に入ったのは10年ぶり。繁殖地で皇帝ペンギンたちを見たときには、予想していなかった、特別な感情がわきおこってきたよ。一言で言えば『会いたかった』という気持ちだな」
そう語るのはリュック・ジャケ監督。デビュー作「皇帝ペンギン」は、「世界で最も過酷な子育てをする鳥」と呼ばれる皇帝ペンギンの1年を丁寧に追いかけ、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞をはじめ、数々の栄誉ある賞に輝いた。
前作でタキシードを着たような皇帝ペンギンの不思議な生態を知った人は多いだろう。零下40度、時速250キロというブリザードが吹き荒れる真冬の南極で、オスは2カ月ものあいだ立ったまま、自らの足の上にタマゴをのせて温め続けるのだ!
「前作を撮ってから12年経ったあいだに、撮影技術は驚くほど進歩しました。今回は水中写真家で海洋生物学者のローラン・バレスタ、野生動物写真家のヴァンサン・ムニエ、ダイバーのヤニック・ジャンティなどにも参加してもらい、4Kカメラとドローンも使っています。新しい映像は緻密で繊細、そしてダイナミックになりましたよ」
画面からはペンギンの柔らかな羽毛や青い空を映した南極の氷山など、これまでに観たことがなかった映像が展開する。
とりわけ水温マイナス2度、水深100メートルの海を無呼吸で潜水し、飛ぶように狩りをする皇帝ペンギンの姿は圧巻だ。
だが、躍動的な皇帝ペンギンたちが暮らす南極の環境は、地球温暖化の影響で年々厳しくなっている。
「今回の撮影で初めて、雨が降りました。これは驚くべきことです。皇帝ペンギンのヒナの羽毛には防水機能がありません。雨に濡れたあとの寒さで、死んでしまうヒナが多いのです」