近年、“墓じまい”をする人が増えているが、離檀料として100万円請求されるケースも。檀家制度は崩壊しつつある(撮影/今祥雄)
近年、“墓じまい”をする人が増えているが、離檀料として100万円請求されるケースも。檀家制度は崩壊しつつある(撮影/今祥雄)
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 檀家関係の煩わしさなどから、菩提寺を離れ「墓じまい」する人が増えている。そうした“寺離れ”や“お坊さん離れ”の原因とは何か。業界の現状や問題点などを3名の現役住職が匿名座談会で明かした。

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●座談会参加者
住職A(50代)=19歳で出家。中国地方の真言宗系のお寺で修行した後、数年前に近畿地方で別院を開き、住職に。檀家はほとんどなく、仲介サービスを広く活用

住職C(40代)=伯父の後を継いで数年前に関西のお寺の住職に。いち早くHPにお布施料を明記するなどの先進的な試みに着手。ペット霊園なども運営

住職B(30代)=18歳で出家し、高野山で修行。若くして祖父のお寺を継ぐ。お祭りや行事ごとに積極的に励んで、檀家を獲得。現在、2人の弟子を抱える

──近年「墓じまい」というかたちで、菩提寺と縁を切る檀家が増えていますが、その原因はどこにあると考えていますか?

A:お寺の世襲制に尽きるでしょうね。信仰心がなくても、まとまった檀家さんがいるお寺を継げば、左うちわの生活ができたんですから。檀家も代替わりしたら、嫌になりますよ。仲介サービスを利用する喪家の方から、頻繁に聞きますもん。「壁を修繕するので一律100万円の寄付をお願いします、みたいなハガキが何度も届いて檀家制度が嫌になった」と。

B:本来、お布施をもらう行為は“布施行”といって修行の一つなんです。葬儀も僧侶にとって、亡くなった方を仏として送り出すことで弟子(仏)を増やす修行の一つ。だから、檀家に限らず、広く宗教活動を行うことが僧侶として本来あるべき姿なんです。そういう本質に目を向けず、檀家からのお布施収入に胡坐をかいて、広く供養心を育もうとしなかった業界の責任は重いでしょう。なぜ、通常の戒名よりも院号居士のほうが高いお布施を要求されるのか、わからないという人が大半じゃないでしょうか? 院号は僧侶の住む「お寺」を意味する言葉。故人に院号をつけるということは、「お寺を背負って旅立ってもらい、仏様になる」という意味合いがあるのに、今ではただ単に「レベルの高い戒名」という認識が広まっています。だから、「親戚から院号居士をつけてもらわないと恥ずかしいと言われたので……」とお願いしてくる喪家の方が非常に多い。通常の戒名でもまったく恥ずかしいことはないのに。院号居士をブランド化すれば、戒名代だけで100万円はもらえると考えた業界の悪しき慣習と言わざるを得ません。

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