C:業界の問題に加えて、社会構造の変化もありますね。以前は葬儀をはじめとした仏事が、町会や互助会単位で行われてきましたが、核家族化が進んで、親戚付き合いさえも希薄化していっています。町会や互助会が葬儀を仕切ってくれたときは、みんなで葬儀代を出してくれていたのに、今は家族単位の葬儀が主流なのですべてのお金が喪家の負担じゃないですか? そうなれば、当然、高いお布施を要求する菩提寺とも疎遠になります。離檀率が高まり、身寄りのない独居老人が増えていることを考えると、近い将来に檀家制度は崩壊するでしょう。下手をすると「お坊さんはもういらない」という時代が来るかもしれない。直葬(通夜・告別式を行わずにすぐに火葬する葬儀)が増えているのは、その前兆と言ってもいいでしょう。

──ただ、仏事にお坊さんは欠かせないのでは?

C:その認識はまだあるのでバイト感覚のアパマン坊主(お寺に所属せず、アパート・マンションに暮らす僧侶)が成り立ってしまうんです。ただ、お坊さんを派遣するだけのサービスがさらに浸透していくと、さらに“お坊さん離れ”が加速していくと見ています。アパマン坊主は、法事が終わったら「ありがとうございました!」と挨拶してさっさと帰る連中ばかりですから。法話なんてしない。完全にバイト・副業感覚なので、リピーターを獲得しようとも考えてない。これじゃあ喪家は「四十九日もお願いしたい」とはなりませんよね。

B:おっしゃるとおりですね。私も檀家制度が悪いと言ってるわけではないんです。“お坊さん像”を壊してしまった、業界の問題です。お坊さんは高級車に乗ってはいけない、などとも思っていません。私の師匠もベンツに乗っていましたし。ただ、そのベンツは「あまりにもオンボロの軽自動車に乗ってもらっていては申し訳ないので……」と檀家さんから中古で譲ってもらったもの(笑)。誰からも尊敬される僧侶であれば、何の問題もないんです。

A:その点でいうと、インターネットを利用した仲介サービスが増えた影響で僧侶が尊敬されにくくなったかもしれないですね。表現が難しいのですが、僧侶が軽い存在になってきたというか。こちらが低姿勢で対応しても、乱暴な言葉遣いをされる喪家の方が増えた印象です……。

(構成/ジャーナリスト・田茂井治)

※AERA 2018年8月13-20日合併号より抜粋