ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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21年前から肉を食べるのをやめました。若い頃は超肉食で、ステーキ何百グラムにご飯を2杯、3杯。でもお世話になった先輩たちが肉をやめて、穏やかになるのを見て「この先、野菜と魚でいいかも」と思いました。僕もイライラしなくなった気がします。ヒップホップは米国の、治安が良くない土地で生まれた音楽。体制への反骨心や互いの主義主張をリズムに乗せてぶつけ合う一方で、根底にあるのは「ピース」な心。そんな哲学からか、ヒップホッパーにはベジタリアンが多いんです。
で、連載初回はピーマンです。子どものころ大っ嫌いでした。青々として、独特の香りと苦みがあって。親は何とか食べさせようと小さく刻んでいましたけど。でもあるとき、「これはこういうもの」と思えた。ピザやピラフがピーマン抜きだと寂しいですよ。
人間も、音楽もそう。オペラとか歌舞伎とか、自分の中にない要素でも「これはこういうもの」と広い視野で捉えてみると、意外に感動できる。あの感じを自分の音楽に持ち込めないかな、と曲作りに影響を受けることもあります。
※AERA 2018年8月13-20日合併号