箕牧さんの期待も大きい。

「高校生が頑張っていて、平和活動をしてくれる。とても頼もしいと思っているんです」

 被爆者が高齢化し、語り部が亡くなっていく現状が高校生たちをかき立てている。時代にあった新しい発想も採り入れ、自分たちのやり方で、広島発、世界行きの平和の願いが発信されていく。国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が昨年、ノーベル平和賞を受賞したことも、今後ますます子どもたちの活動の追い風になるとみられている。

 被爆者たちの高齢化に伴い、今後どのように核廃絶のメッセージを世界に送り続けるのか。この大きな課題は、広島平和記念資料館の展示のあり方の見直しにもつながった。本館は今、大規模改修工事中で、来春に予定されるリニューアルオープンまでは入館ができない。

「資料館には、幽霊のような人形もあったんですよ。今はもうないですからね」

 そう話しながら箕牧さんが手に持った紙芝居の1枚には、資料館の本館に展示されていた「原爆再現人形」の写真が掲載されていた。人形は改修工事後、本館の展示からは撤去されることが決まっている。箕牧さんが説明する。

「当時を知る被爆者は人形を見て『もっとひどかった。あんなもんじゃない』と言う。怖いと思う子どももいるらしい。それだけインパクトのある展示だから、もちろん継続を望む声があるのも知っている」

 実際に、資料館以外の場所での展示を求める声など、賛否両論は今もある。

 資料館によると、「被爆の事実をストレートに伝える実物資料の展示を重視するなど、原爆の非人道性、原爆被害の甚大さ・凄惨さ、被爆者や遺族の苦しみ・悲しみなどをこれまで以上に伝えていくことができるような展示内容とする」という。被爆者が少なくなる今後も原爆の実相が忠実に伝わるように、被爆者の証言ビデオや写真、遺品などを重視するほか、CG技術などを駆使した再現映像も使う。本館に先駆け、昨年4月にリニューアルオープンした東館では、こうした方針に則した展示物を既に見ることができる。

 被爆73年が経ち、次世代を見据えた様々な取り組みが新たに始まっているが、変わらないのは被爆者たちの思いだと、箕牧さんは強調する。

「これから私たち被爆者が一人もおらん日が来る。それまでに核のない世界を実現したい。あの世に行った時、早く亡くなっていった被爆者たちに、核兵器が地球からなくなったという報告をしないといけんのです」

(AERA編集部・山本大輔)

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