奥原希望(おくはら・のぞみ)/個人で約11カ月ぶりに優勝したタイ・オープンを終えて帰国した成田空港で、報道陣の質問に笑顔で答えた (c)朝日新聞社
奥原希望(おくはら・のぞみ)/個人で約11カ月ぶりに優勝したタイ・オープンを終えて帰国した成田空港で、報道陣の質問に笑顔で答えた (c)朝日新聞社
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三宅宏実(みやけ・ひろみ)/5月の全日本選手権では、右足の付け根にけがを抱えながら練習を大きく上回る記録で優勝した (c)朝日新聞社
三宅宏実(みやけ・ひろみ)/5月の全日本選手権では、右足の付け根にけがを抱えながら練習を大きく上回る記録で優勝した (c)朝日新聞社

 東京五輪・パラリンピック開幕まで2年を切った。アスリートたちはリオデジャネイロで届かなった思いを胸に高みを目指している。

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●重量挙げ 三宅宏実
ケガ越えて見せつける凄み

 日本の女子重量挙げ界を牽引してきた三宅宏実(いちご)は、東京五輪を集大成の場として見据えている。五輪にはアテネから4大会連続で出場。ロンドンで銀、リオで銅を獲得した。2年後の東京五輪、目指すものは一つだけだ。

「イメージはいいものを常に描いている。一番高い、どのアスリートも金メダルを目指して練習していると思う」

 国際重量挙げ連盟は7月5日の理事会で、東京五輪での体重区分を変更した。女子の最軽量は49キロ級となり、三宅は従来の48キロ級より1キロ重い階級に挑む予定だ。

 11月で33歳。持病の腰痛は完治が難しく「うまく付き合うしかない」状態だ。ときに自然と腰をかばう動作が出て、ほかの部分をけがしてしまうリスクも抱える。試合当日にどれだけ肉体を100%に近づけられるかが、勝負どころになりそうだ。

 対策の一つとして、食事改善に取り組んでいる。栄養士の指導のもと「脂質は1日60グラムまで」など、より食事に気を配っているという。

「パンよりもご飯の方が脂質は少ないなど勉強になる。あとは三食重ならないよう、朝に豚肉を食べたら昼は牛肉、魚とか。一日楽しんで食べられるようにサポートしてもらっている」

 努力の成果は、5月に石川県のいしかわ総合スポーツセンターで行われた全日本選手権にも表れた。第1日の25日に48キロに出場し、トータル181キロ(スナッチ78、ジャーク103)で優勝した。ジャークでは1本目で挙げた98キロから、一気に102キロに設定。父親で監督である日本ウエイトリフティング協会の三宅義行会長に「勝つための作戦」と押し切られると腹を決め、「できる、筋肉は覚えているはず」と気合で持ち上げた。3本目には103キロまで伸ばしている。

 実は大会の約2週間前には右足付け根を痛めていた。練習で挙げた重量はスナッチが72キロ、ジャークは97キロ。「6割ぐらい」というコンディションのなか、土壇場で最大限の力を発揮する凄みを見せつけた。

 周囲では衰えを指摘する声もあるというが、「ピークから下がっていると思われるのは、悔しい。復活して、もう一回記録を出したい」。悲観的な雑音をモチベーションに変えている。

「私自身、一年一年、色々なストーリーになっていくとは思うけど、変化にも対応できるアスリートになりたい」。夢を現実に変えるため、きょうも厳しいトレーニングに励む。(朝日新聞記者・遠田寛生)

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