埼玉県熊谷市では今月23日に「41.1度」を記録。国内観測史上最高を更新した (c)朝日新聞社
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 台風12号が過ぎ去り、再び猛暑が戻ってきた。熱中症対策が必要だ。熱中症は「自己責任」の一言では片づけられない。「休みたくても休めない」働き方や学校の部活なども影響している。

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 7月中旬、都内のホテルに勤務する営業職の男性(34)は午前中に2時間半の外回りを終えて職場の自席に座った途端、強い吐き気に襲われた。顔がほてり、汗も止まらない。隣席の同僚に自分の状況を説明しようとするが、言葉がうまく出てこない。病院に連れていかれて熱中症と診断され、点滴を受けた。

 前夜から軽い頭痛があり、朝になっても体がだるく、熱中症かもしれないと思ったが、「熱中症ぐらいでは休めない」と、普段通りに出勤し、営業先へ。世は「クールビズ」が推奨されているが、仕事柄、ネクタイと上着は手放せなず、大事なアポイントをこなした。

災害級」と称される今年の猛暑。7月22日までの1週間には、熱中症で2万2647人が搬送され65人が亡くなった。気象庁は23日に緊急の記者会見を開き、「命の危険がある暑さ。一つの災害と認識している」と述べ、気温の高い状況が少なくとも8月上旬まで続く見通しを示した。台風12号の影響で厳しい暑さはいったん収まったが、今週は日差しや蒸し暑さが戻ってきたため、再び熱中症の対策が必要だ。

 熱中症は気温や湿度が高い環境に体が適応できなくなることで起きる。帝京大学病院高度救命救急センター長の三宅康史医師によると、気温が高いときや運動をしたときは、汗をかいたり血流を体の表面近くに集めて冷ましたりして体温の上昇を防ぐ。

 ところが、暑い環境下でどんどん汗をかくと体内の水分量が減り、体温調節が間に合わなくなる。体温が徐々に上がり、脳や肝臓、腎臓などの重要臓器も機能しづらくなる。血流も減り、めまいや立ちくらみなどの熱中症の症状が現れる。進行すると重要臓器がダメージを受けて機能不全に陥ったり、心臓のポンプ機能が低下したりすることもあり、命を落とす人や重い後遺症に悩む人もいる。

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