日本証券業協会の鈴木茂晴会長も24日の記者会見で、「我々は統計の数字を見て判断しており、間違ってもらっては困る」と苦言を呈した(撮影/長谷川唯)
日本証券業協会の鈴木茂晴会長も24日の記者会見で、「我々は統計の数字を見て判断しており、間違ってもらっては困る」と苦言を呈した(撮影/長谷川唯)

 7月24日、日本銀行の統計作業の誤りで、個人など家計が保有する「投資信託」の 金額が、30兆円以上も過大計上されていたことが明らかになった。

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「日銀に業務改善命令を出すべきではないのか」。怒り心頭の金融庁関係者の間では、こんな過激な発言も飛び出した。

 投資信託は個人の代表的な投資商品で、政府も「貯蓄から投資へ」をスローガンに投資信託の購入を後押ししてきた。その旗振り役こそ金融庁であり、NISA(少額投資非課税制度)を通じ、家計の資産運用の多様化策として投資信託の購入を推奨してきた経緯がある。

「貯蓄から投資への転換は、まさにアベノミクスを代表する政策。今年1月からは年間投資額40万円までの配当・譲渡所得等を20年間にわたり非課税とする『つみたてNISA』もスタートしたばかり。その矢先に本当は家計の投資信託の保有額は減っていましたでは話にならない」(金融庁関係者)

 なぜ日銀は統計を誤ったのか。ミスがあったのは、金融機関や家計などの資産や負債の推移を示す「資金循環統計」。この統計は年1回調査方法を見直す改定を行っており、今年6月下旬の改定値を算出する際に誤りが見つかったという。2005年以降の数値をさかのぼって改定した結果、17年12月末の家計の投資信託保有額は、改定前の109兆1千億円から76兆4千億円へ、約33兆円も減少した。個人金融資産に占める投資信託の割合も、改定前は12年の3.8%から17年には5.8%まで上昇したことになっていたが、実は、14年の4.6%をピークに、17年には4.1%まで低下していたことが判明した。

 ミスの元凶は、ゆうちょ銀行の保有分だった。家計の保有額は、投資信託の総額から、金融機関などの保有分を差し引いて算出されるが、ゆうちょ銀行の保有分のうちこれまで「外国債券」としていた資産の一部が投資信託であったという。

 本来、差し引かれるべきゆうちょ銀の保有額が個人分に加算されていたわけだ。明らかな統計のミスなのだが、日銀は「統計精度の向上の結果であり、ミスではない。調査項目が多数あり、見直しが追いつかなかった」と説明している。

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