●賛否分かれる強い個性
本田が過去に残してきた結果に異論を挟む余地はない。何しろ、2度出場したW杯で、本田は7戦すべてに先発出場し、日本の挙げた全6ゴール中5得点(3ゴール2アシスト)に絡んできたのだ。
それでも、強烈な個性、決してスピードがあるわけではないプレースタイルには、賛否がある。本田もこの6月には32歳となり、アジア予選を戦う中ではコンディションも下降。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の求めるイメージとの乖離もあって、絶対的な存在ではなくなりつつあった。そんな本田にとって、W杯開幕を2カ月後に控えた指揮官の交代は復権の絶好の機会ともいえた。だが、西野朗監督就任後のテストマッチのガーナ戦、スイス戦に攻撃の中心として起用されるも結果を残せず、スタメンの座を香川に譲ることに。本田はおそらく最後になるであろう自身3度目のW杯を、ベンチからスタートすることになった。
過去2大会とは違い短い時間のなか結果が求められる役割についてはこんな話をしている。
「準備の仕方は明らかに違います。ただ、サッカー人生でこれだけサブ(控え)ということに対して前向きに考えられたことはなかった。それはW杯がそうさせてくれていると思う。(具体的に言えば)単純に、1点1点がベンチにいてもうれしいじゃないですか」
「僕にはできない采配」
そう、本田はスタメンから外されたからといって、決して腐ることなくベンチからチームを鼓舞し、そして何より与えられた少ないチャンスのなか、誰よりもギラギラとチャンスをうかがっているのである。
1勝1分けのグループ首位で迎えた28日の1次リーグ第3戦のポーランド戦。日本は先発を前の試合から6人入れ替えて臨むも、そこに本田の名前はなかった。すでに敗退が決まっていたポーランドに先制点を許すと、そのまま0-1と敗れた。最後の数分間は、ポーランドにリードを許しながら、同時刻に他会場でコロンビアがセネガルを1-0とリードしている情報が伝わると、日本はまるで試合を捨てたように終了の笛を待った。
そのまま勝ち点で並ぶ日本とセネガルがともに敗れれば、セネガルをフェアプレーポイントで振り切り、日本のグループ2位での1次リーグ突破が決まるからである。ただ、この戦いぶりには、会場のスタンドからブーイングが起こっただけでなく、世界中のメディアから批判を受けることになった。
もしセネガルがコロンビアから同点弾を奪っていたら、日本は自力で決勝トーナメント進出のチャンスがありながら、それを自ら放棄してしまったからである。本田自身も最終戦に絡めずW杯が終わるところだった。