5年前に、様々なメディアで取り上げられ、「アザがあるのに強く生きる女性」のアイコンとして注目された。本意でなかった部分は正直ある。だが、マイナスだけではない。病気を理解してくれる人が増え、同じ症状に悩む人たちにも出会えた。「取り上げていただいたことには感謝しているんです」と語る。ただ、月日の流れとともに心境に変化が生じるようになった。

「あの時は『個性を武器にしよう』と言っていましたけど、使うタイミングと度合いは気を付けたほうがいいかなと。同じ症状で個性として使いたくない人もいるし、無個性で悩んでいる人もいる。目立つことは嫌じゃないけど、自分がアイコンになるのは必ずしもいいとは言えない。いろんな人が声を上げたほうがいいと思いますし、私が目立たない社会が一番いいんですよ」

 多様な価値観に触れたいと旅を続け、離島で数カ月間暮らしたことも。景色を撮り続け、興味を覚えたのが写真の世界だった。大学卒業後に、写真撮影や編集ソフトの勉強に取り組み、プロフォログラファーのアシスタントとして学ぶ日々。自身がフォトモデルを務める仕事もある一方で、モデル、俳優から撮影依頼が舞い込むなど仕事の幅を広げている。

「写真を撮ってほしい理由は様々だと思うんです。病気や障害で悩んでいる方が、私に頼みやすいなどの理由でお役に立てるなら喜んで撮影します。また、見た目を意識してきた私だからこそできる表現を、モデルや俳優、アーティストなどと共創できる機会をいただけることもうれしいです。人が前進して喜んでいる顔を見るのが好きなんです」

 彩さんはフォトグラファーの話題に及んだ時が、最も楽しそうに映る。主役を輝かせることが性分に合っているのかもしれない。「スターの看板を背負う器じゃないんですよ」と苦笑いを浮かべる。

 彩さんがインスタグラムに投稿したメッセージに、以下の文章が綴られていた。

「25年経って、ようやく私の顔にある #birthmark は、『他の誰かに対して“見た目で判断しないで”という訴えをするため』ではなく『私自身に対する、"本質を見抜けるひとになりなさい、見た目だけで判断してはいけないのよ" という自戒のマーク』なのかもしれないと思うようになった。だから、隠したり、消したりする運命を辿ってこなかったし、むしろ表現に使っているのだと思う。私は私と向き合ってるだけなのね。気づかせてくれてありがとう」           

 ありのままの自分を受け入れられる姿は、周囲を包み込む柔らかさがある。新型コロナウイルスの感染が収束し、今後は世界各国で活動したいという。未来への可能性は、無限に広がっている。

(今川秀悟)

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