変更ポイントの一つは社会科の再編だ。これまでは世界史が必修科目で、加えて日本史か地理のいずれかが必修だった。見直し後は近現代の世界史と日本史を合わせた「歴史総合」と、地理に環境や防災の内容を加えた「地理総合」の両方が必修になる。公民科目では18歳選挙権を踏まえ、主権者としての知識や判断力を養う「公共」が新設される。

 ポイントの二つ目は、「探究」の重視だ。「古典探究」「理数探究」など新設科目の多くに探究の文字がつく。これまで高校では、小中に比べて知識偏重で、授業も一方的に教え込むスタイルが多いと批判されてきた。探究型へのシフトは、新しい大学入試が問うことになる「思考力・判断力・表現力」を育む狙いがある。

 来年度からの移行措置を前に、各高校はカリキュラムの改訂作業に入る。全国高等学校長協会の前会長で「高大接続システム改革会議」のメンバーも務めた都立八王子東高の宮本久也校長は、各大学の入試改革の具体像が見えないまま高校の授業内容を大きく変えることに「不安もある」と漏らす。

「例えば探究型の学習はAOや推薦入試には有利とされますが、大多数の生徒が受ける一般入試で、探究で積み上げてきた内容がきちんと評価してもらえるのか。ある大学は探究型の学習を評価し、別の大学は従来型の知識のみを評価するといった事態になれば、生徒は混乱するし負担も大きい」(宮本校長)

 英語で導入が予定されている民間試験も、高校の指導要領とは連動していないため、民間テスト対応のために別の勉強が必要になるのではと懸念する。

「高校で新指導要領に沿った勉強をしっかりやっていれば対応できる入試になるかどうかが、非常に重要です」(同)

 新指導要領の全面実施は小学校では20年度、中学校では21年度から。高校は、今の小6が入学する22年度から順次実施される。それまでに解決すべき課題はまだまだある。(編集部・石臥薫子)

AERA 2018年4月23日号より抜粋