政府は買い物などで電子マネーとして使える「マイナポイント」を申請者に付与するなどして、マイナンバーカードの普及に前のめりに取り組んできた。その結果、4月16日時点で9600万件以上の申請があり、「ほぼ全ての国民に行き渡らせる水準までは到達した」(松本剛明総務相)との認識だ。

 様々な問題や慎重論もあるなかで、なぜ政府はそこまで急いでマイナンバーを進めたいのか。

 制度に詳しいPwCコンサルティング合同会社の上瀬剛執行役員パートナーは、「国と自治体がマイナンバーを共有することで、行政の窓口にとっては情報の照合や入力作業など手間のかかる業務が効率化できます。地方自治体では人手不足も課題となっており、その解決策として期待されている面もあります。また、国民にとっては窓口にいかなくても行政サービスを受けることができ、給付金などが迅速に支給されるなど利便性の向上にもつながります」

 との考えを示した上で、導入の背景について、

「インボイス制度の導入など政府はデジタル化による税の徴収の強化に取り組んでいます。現在は任意となっていますが、マイナンバーと銀行口座をひもづけることで、金融資産・取引の透明化を通じて、適切に税金を納めてない人の把握につながる可能性があります。海外に金融資産を移転して課税から逃れようとする人もいますので、そうした人たちからも適切に徴収したいという思惑もあるのだと思います」

 と説明した。

 安心・安全のマイナンバーカード。と、なるまでにはまだ課題が多そうだ。

 (AERA dot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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